研究課題/領域番号 |
16K00968
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
笠 潤平 香川大学, 教育学部, 教授 (80452663)
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研究分担者 |
岡本 正志 高野山大学, 文学部, その他 (70149558)
谷口 和成 京都教育大学, 教育学部, 教授 (90319377)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学教育 / 中等教育 / 探究活動 / 実験ノート / 評価 / 英国 / Aレベル科学 |
研究実績の概要 |
(1)英国の新しいAレベル試験制度のもとでの探究活動および実験活動の保証、筆記試験の内容について、その関連文献を検討整理した上で、OCR試験局が提供するAdvancing Physics courseのサンプル試験問題の全訳と研究協力者との共同検討を進めた。それらの成果は物理学会で発表した。 (2)香川大学および同附属の2中学校を中心に、香川・徳島・京都地区の研究協力者とともに探究活動の指導に適した教材の開発と試行を行った。1つは、既存の実験(たとえば音波の定常波の観測実験)を探究的な味わいを持つ実験に変える授業プランの開発である。また、日本ではほとんど扱われないが、科学的に重要でかつ中学生でもできる探究活動(たとえば塩酸と金属の反応速度の温度依存性を探る活動)の開発と試行も行った。 (3)探究活動に必要な諸能力の育成に関する基礎的な教材として、児童生徒の思考操作能力の発達を促進する教材や、科学的な考察の基礎となるアーギュメンテーションの力を育成する教材などを検討し、大学および研究協力校で試行するなどした。また、探究活動における実験ノートの活用について、これまでのSSH校などの協力校における実践に加えて、本年度は香川大学附属の中学校理科教員とともに、中学校理科における活用の指導事例の検討を深めることができた。 (4)上記(2)(3)の授業例の試行を広げるための教材セットの貸し出し体制を整え、いくつかの学校・大学に貸し出しを開始した。 (5)これらの活動を反省的に総括し、生徒による実験・実習活動を探究的なものにする諸要素および探究的(inquiry-based)な授業と生徒が実験の計画を立てデータを取り考察し結論を出し発表するという探究活動(investigation)との区別などについて理論的な考察をした。その成果は30年度に発表予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
英国では新制度の下での第1回のAレベル修了試験が行われたが、その結果を検討する諸報告および論文が想定ほど十分揃わなかったこともあり、当初の計画にあった英国訪問を見合わせたが、探究活動や探究活動に関する思考操作能力等に関連する、入手できた範囲の諸文献の検討は十分に行うことができている。とくに英国の新しいAレベル試験問題サンプルの全訳と検討、探究的な味わいのある魅力的な授業例の開発と試行、アーギュメンテーション能力を育てる教材、実験ノートの中学校での活用の事例検討、アメリカの大学入門レベルでの探究活動に関する検討などで新しくまた実践的な成果が多く上がっている。30年度にはこれらの成果を順次、論文化および学会発表によって公表していく計画がすでに立てられている。
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今後の研究の推進方策 |
英国の新制度の下での実験活動とくに探究活動の実態に関しては、英国の研究協力者との連携によって、新しい評価制度の実態を調査・検討する。 日本の中等教育(および初等教育)で利用可能な探究活動用の教材とその指導のノウハウの開発、および探究活動の前提となる諸能力の育成のための教材については、研究協力者との協力を強めるとともに、さらに新たな研究協力者を募り、研究の規模を広げる。 これまでの成果を整理した論文を発表するとともに、探究活動をめぐるシンポジウムを開催するなどして、成果の普及につとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
渡英調査を延期したため。次年度使用に回した助成金は、英国への渡航調査ないし海外からの研究者招聘によるシンポジウム開催などに回したいと計画している。また、資料入手のための海外の教材・研究誌・書籍の取り寄せなどにも利用したいと考えている。
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