研究課題/領域番号 |
16K00969
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松村 雅文 香川大学, 教育学部, 教授 (50239084)
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研究分担者 |
加藤 恒彦 国立天文台, 天文シミュレーションプロジェクト, 専門研究職員 (90413955)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | プラネタリウム / 天文教育 / 科学教育 |
研究実績の概要 |
本研究では、小学校・中学校のクラスにおいて、より有効な天文学習を行うための、新たなデジタル式プラネタリウムに対応した学習投影の手法を開発することを目的としている。このため平成28年度は、(1)全国各地のプラネタリウムにおける学習投影の調査を行い、(2)あすたむらんど徳島プラネタリウムにおける学習投影に関する考察を進めた。 (1) 全国のプラネタリウムの学習投影の調査については、学会・研究会での関係者からの情報提供、各施設の実地の調査、各施設のウェッブページを用いての情報収集を行った。その結果、8施設についての学習投影の資料を入手することが出来た。特に、旧・杉並区立科学センターで発行された調査研究報告(1973年~1982年、全10冊)は閲覧の機会が限られ貴重なものであったが、内容検討のための調査ができ、本研究にとって大きな成果であった。同センターの実践の特徴として、学習活動においてワークシートが活用されていたことが確認された。これらの資料等のpdfファイルは当研究のウェブページに置かれている。但し、現在の所、著作権等の問題が必ずしも明確ではない資料もあるため、このページの公開は当研究の関係者に限っている。 (2) あすたむらんど徳島プラネタリウムにおける学習投影に関し、小学校・中学校の天文の単元を学習するための効果的な投影手法を考察した。この考察の過程で、学習者がプラネタリウムの客席で資料を参照し、メモを取るのに必要な照明は、どうすれば適切であるのかという学習投影固有の実際的な課題があることを見出した。明るすぎても暗すぎても、学習に困難が生じる。施設によっては、特別なライトを作成してこの問題を解決しているが、このライトは特注品となって高価である。そのため、他の解決法の追及も必要であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、主に (1) 全国各地のプラネタリウムにおける学習投影の調査と、(2) あすたむらんど徳島プラネタリウムにおける学習投影に関する考察を行った。 (1) 全国各地のプラネタリウムにおける学習投影の調査に関しては、札幌市、仙台市、福島市、郡山市、白石市、杉並区、京都市、徳島市、広島市の計8施設についての資料を入手し、内容を検討することができた。この数は全国のプラネタリウムの施設数(約300)と比べると決して大きくはない。しかしながら、学習投影を精力的に行っている施設は必ずしも多くはないことを考えると、本研究に必要な資料の大半は入手できたと考えている。 (2) あすたむらんど徳島プラネタリウムにおける学習投影に関する考察は、約10回、同プラネタリウムの安藤 徹氏(研究協力者)と協議を行って進めてきた。 また、次年度、Mitaka立体上映システムを香川大学教育学部附属坂出中学校(予定)に納入予定であるので、同システムの適切な構成について調査した。Mitakaシステムの構築には、液晶シャッターの眼鏡を用いる方法と偏光めがねを用いる方法ある。平成28年度の研究で、教室での多人数による使用には、偏光めがねの方式が適切であることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度までの進捗状況〔(1)全国各地のプラネタリウムにおける学習投影の調査と、(2)あすたむらんど徳島プラネタリウムにおける学習投影に関する考察〕を踏まえ、より有効な天文学習を行うために、新たなデジタル式プラネタリウムに対応した学習投影の手法を開発する。 このため平成29年度は、(3)香川大学教育学部附属坂出中学校(予定)に Mitaka立体上映システムを納入する。このシステムは、通常のデジタル式プラネタリウムとは異なる範疇のものであると言われることもあるが、デジタル式の投影方法を用いて天文現象の理解を促進するという意味では、同等のものであると位置づけることができる。そこで、同システムを納入し、実践的に用いることで、新たに開発しつつある学習投影方法を検証する。 また、新たな学習投影の開発にあたって、北米の先進的な天文教育を参考にする。このため (4) アメリカ・カナダのプラネタリウム施設を訪問して、調査並びに情報交換を行う。この過程において、本研究を、世界的な天文教育の中に位置づけることも試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
全国各地のプラネタリムの調査は、ウェブページを用いる調査等を行ったため、当初の予定よりも旅費を抑えることができた。また物品費として調査用のパソコンを納入することを想定していたが、既存のパソコンを有効利用したため、物品費は発生しなかった。これらの理由により、次年度の次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の研究計画では、導入予定のMitaka立体上映システムにおいて、液晶シャッターの眼鏡を用いることを想定していた。しかしながら、平成28年度の研究を通じて、学校の教室でより効果的な天文学習を進めるためには、偏光めがねを用いたシステムのほうがふさわしいことが明らかになった。このためには、当初の計画で想定したよりも高額なプロジェクターが必要である。そこで次年度使用額と平成29年度分の助成金を合わせて、偏光めがねを用いたMitaka立体上映システムを整備する。
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