研究課題/領域番号 |
16K00974
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研究機関 | 埼玉工業大学 |
研究代表者 |
石原 敦 埼玉工業大学, 工学部, 教授 (50245247)
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研究分担者 |
中原 真也 愛媛大学, 理工学研究科(工学系), 教授 (20315112)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハイブリッドロケット / ロケット / ペットボトル / モデルロケット / 教材 |
研究実績の概要 |
初年度となる本年度は、身近にあるペットボトルを用いたハイブリッドロケットシステムを、理科および技術分野のための新教材にするために、次の事項を主に検討した。 推力を増減調整できる教材ロケットシステムを確立するために、燃料内に段差を設けると推力が向上する傾向にあることを明らかにしたこれまでの成果を踏まえ、まず、特に内径形状について検討を行った。その結果、段差を1段だけではなく複数段付けるとさらに推力が向上することを明らかにできた。さらに、3Dプリンターを用いて、通常の機械加工では製作不可能な複雑なグレイン形状を有する燃料の製作を試みた。その結果、これまでのポリエチレンで製作した燃料と同様に、酸素ノズルおよび主ノズルと接合が可能で、0.7MPa程度まで気密が保てられる複雑グレイン形状を有する燃料燃焼室を、3Dプリンターで製作する手法を確立した。さらに、その手法で試作した燃料が、ポリエチレンと同等のロケット推力を発生することを確認した。 一方、ロケット飛翔中のデータ計測を可能にするために、ロケットに搭載した電子機器の落下時の破損を防ぐ必要がある。そこで、本年度はロケットに設置された落下傘によりロケットを地面に軟着陸させるシステムについて検討した。その結果、ロケット降下時に開花する落下傘を試作することができた。 さらに、教材として有効性を検証するために、中学生のみならず小学生を対象とした理科教室を実施した。その結果、ロケットの模擬打ち上げ実験時に、特に小学生の低学年にロケットの作動が怖いと感じる児童がいることがわかった。このことから、対象とする生徒や児童に合わせて、初期推力や酸素タンクサイズを、調整する必要があることを認識することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、当初の計画のとおり、最適な燃焼室形状を設計するために必要な、燃料グレイン形状について検討した。さらに、圧力波形から推定した推力の妥当性を検証するために、ひずみゲージまたはロードセルを用いた推力計測法の構築も試み、ロケットの性能予測の精度向上法についても検討できた。 また、3Dプリンターを用いた燃料棒の製作法についても問題点を明らかにできた。 さらに、ロケットにマイコンボードとセンサーなどを搭載できるようにするために、落下傘降下システムについて検討し試作を行えた。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に引き続き、3Dプリンターによる燃料グレイン形状のロケット性能へ与える影響を検討するとともに、3Dプリンターのロケット教材としての有用性についても検討する。さらに、ロケット性能を評価する上で重要な推力の計測精度の向上および低価格化を目指す。また、教材としての効率化を図り、燃料の再利用性についても検討する。加えてロケットの飛翔中のデータを計測するために、本ハイブリッド・ロケット内に装着可能なセンサーを搭載したマイコンボードを試作する。 さらに、安定な弾道飛翔をするロケットの空力特性を考慮したハイブリッド・ロケットの空力設計および開発中の落下傘の開花角度の向上を目指す。その後、学内のグランドを利用して、ハイブリッド・ロケットの飛翔実験を実施する。ここでは、飛翔試験を安全に実施するシステムの構築を目指す。さらに、これまでに実験的に得られた燃焼圧力・推力データと飛翔実験で得られたデータと比較検討も試みる。 また、引き続き試作したロケットを中学校通常授業および特別授業で使用する。ここでは、すべての生徒受講生に対して授業アンケートを実施し、参加生徒の様態変化などを観察するとともに教材としての問題点を抽出する。
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次年度使用額が生じた理由 |
3Dプリンターよる燃料の最適設計に時間を要し、備品の購入が遅れたためである。また、ロケット飛翔中のデータを計測するためのロケット搭載電子機器を、ロケット落下時の衝撃から守る落下傘降下システムの試作を優先し、電子部品等の購入費を保留したためである。
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次年度使用額の使用計画 |
経費は、本研究を推進するために有意義に使用させて頂きます。 電子部品や3Dプリンターの消耗品などの購入を予定している。
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