研究課題/領域番号 |
16K00979
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
西仲 則博 近畿大学, 教職教育部, 講師 (80756841)
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研究分担者 |
吉川 厚 東京工業大学, 大学院総合理工学研究科, 連携教授 (50444120)
折田 明子 関東学院大学, 人間共生学部, 准教授 (20338239)
竹村 景生 大阪府立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (40782165)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 統計教育 / 評価方法 / 知識活用 / シナリオ / マンガ |
研究実績の概要 |
本研究は、初等・中等教育における統計教育での「知識活用型授業での評価」と「教師用教材の作成とその評価」である。「知識活用型授業での評価」については、前年度の成果として、一つの問題を多くの資料を用いて考察する授業法(one problem with various data method)を用いて、生徒がグループで行う統計的問題解決のプロセスを評価する、カード型知識活用評価ツール(問題解決後、白らの解決過程を予め川意されたカードを並べ、補記を行って再構成するものである)を開発し、実践を行った。今年は、この評価ツールを基に改良したワークシート型知識活用評価ツールを開発して、その実践を行い、その妥当性を検証した。この結果については、近畿大学教育論叢30(1)に投稿中である。「教師用教材の作成とその評価」においては、昨年度に基礎データを集めたシナリオ埋め込み型評価方法について、開発を行い、完成をした。この結果については、近畿大学教育論叢29(3)で掲載された。また、中学校数学科教員の10カ年研修において実践することができ、教師の気づきを起こさせ、その後、深い学びを起こすことができた。この研究の成果をマンガを用いて、教師用ナラティブ・アプローチ教材の開発を行った。この開発では、マンガに埋め込みする情報を「教師の協同学習における指導力」、「教師の知識活用に関する指導力」「教師の統計的問題解決能力」「教材のパターン」等の観点から整理して、それぞれに段階を設けて、それらの組み合わせを行い、絵コンテ状態で、計6編分を作成した。更に、追加のマンガを作成しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「知識活用型授業での評価」の面においては、計画通り進んでおり、評価ツールの改善にも取り組むことができ、授業の中で、評価ツールを用いての実践も行うことができた。特に、統計的問題解決での知識の活用として、統計で得たデータから相対度数を求め、それを統計的確率と捉えて、判断する授業では、カード型知識活用評価ツールを用いることで、生徒の知識活用を捉える事ができたともに、生徒にとっては表現ツールとして用いられていたことが明らかになった。 カード型知識活用評価ツールを改良して、ワークシート型知識活用評価ツールを作成した。こちらは、A,B2つの中学校のハンドボール投げのデータ(A,Bでデータの数が違う)を用意して、グループでの統計的問題解決を図る授業を行った。この授業では、グループがどのような思考過程を辿り、生徒の知識活用がどのように行われたかを評価ツールで図ることができ、評価ツールとしての有効性を確かめることができた。現在、この授業での生徒のより詳細な問題解決行動の解明を進めているところである。 「教師用教材の作成とその評価」ではシナリオ埋め込み型評価方法の作成においては、シナリオ型の教材を完成して、その実践を行うことができた。この教材を用いた現職の研修では、マンガ中の教師の対応に焦点をあてて、意見交換を行い、深めることができた。この教材の妥当性が証されたと考える。 前述した、A,B中学校のハンドボール投げの問題での生徒の活動状況から得た知見を、シナリオ埋め込み型評価方法を応用したマンガに埋め込むことができた。このマンガは、教師用ナラティブ・アプローチ教材であり、現在、絵コンテ状態で、計6編分を作成した。更に、追加のマンガを作成しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
「知識活用型授業での評価」の面では、開発した評価ツールを用いて生徒たちのグループでの思考過程を詳しく見ていくことで、知識をどのように活用しているかを明らかにすることを目指す。数学の問題解決や一般の問題解決過程に焦点をあてて、その活動の詳細を述べた研究は多くあるが、統計的問題解決、特に、統計的確率を用いて判断を行うときの生徒の様子については、少ない。今回の学習指導要領改定で中学校1年に統計的確率が移行し、相対度数を確率と見なして判断を行うことが求められている。そこに寄与できる研究を行っていく。 「教師用教材の作成とその評価」ではシナリオ埋め込み型評価方法の作成においては、シナリオ型の教材を完成して、その実践を行うことができた。シナリオ埋め込み型評価方法を応用したマンガを用いた、教師用ナラティブ・アプローチ教材の開発を続け、絵コンテ状態で、計6編分を作成した。更に、追加のマンガを作成しているところである。これらを完成させ、計28パターンのマンガができるように研究を進める。このマンガを使って、大学生、教員等々に実験を行い、意図した情報が読み込まれるかどうかを探り、ブラッシュアップとこのマンガを用いての研修方法についてのマニュアルの作成を行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
シナリオ埋め込み型教師用ナラティブ・アプローチ教材として、マンガの開発を続けている。マンガが絵コンテ状態で、計7編分と、導入部分のみ変更した4編を作成し、その評価を行いながら、マンガの改良を加えていた。そのため、完成版を発注するのに時間が掛かった。3月の末に改良を終えて、完成版の発注を行ったところである。新年度で支払いを行う。
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