研究課題/領域番号 |
16K00981
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研究機関 | 八戸工業高等専門学校 |
研究代表者 |
松橋 信明 八戸工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (40199831)
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研究分担者 |
山田 一雅 函館工業高等専門学校, 生産システム工学科, 教授 (40270178)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子シミュレーション / 分子軌道法 / 分子動力学法 / 3Dプリンタ / STLファイル / マテリアリゼーション / 新教材・教育法開発 |
研究実績の概要 |
これまでの研究成果をベースに、市販の分子シミュレーションソフト(分子軌道法、分子動力学法)を用いて新教材の開発を推進し、新教材データベースを蓄積するべく、以下のような研究成果をあげることができた。 分子軌道法を用いてグラファイトとダイヤモンドの混成軌道の違いによる導電特性の比較について研究した。両者の理想値に近いバンドギャップを得ることができ、また分子軌道をグラフィック表示することができた。さらにUV-Visスペクトルから最長吸収波長やバンドギャップを計算し、ハミルトニアンの違いによる計算結果の違いを検討した。 優れた導電特性・機械特性を有する電子材料であるグラフェンに着目し、実験環境の再現を容易にするため、分子動力学法を用いてグラフェン作製の条件を見出すことを目的として研究を行った。面構造が異なるCu薄膜(Cu(110)、Cu(111))上にグラフェンを成長させ、構造を比較した。また、グラフェンを成長させるための最適温度を検討した。 工業系や装飾等で用いられているダイヤモンドの特性に着目し、分子動力学法による温度上昇にともなうポテンシャルエネルギーと運動エネルギーの変化や、ダイヤモンド構造のクラスター形成シミュレーションを試みた。そして、3Dプリンタを用いて、手に取って観察できる、視覚的にわかりやすいダイヤモンド教材の作製に成功した。 分子計算のマテリアリゼーション化と情報化技術の装置実装の連携に関して、光通信仮想プライベート網(VPN)を駆使した高速で確実な遠隔操作を実装するための技術を実際の通信網の動作をもとに考察した。また、3Dプリンタによる造形技術のベースとなるマイクロコントローラ要素技術の基本試作を行い、さらに実験的な考察を行った。これらにより3Dマテリアリゼーション化に関する有用な研究成果を上げることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、学齢的に理論的な理解が難しい高専電子系専門教育において、3Dプリンタによる分子計算のマテリアリゼーション(物質化)を行い、学生の興味を誘起しながら視覚的に電子材料の構造や物性を理解し、創造性を育む新たな教材と教育法の開発を目的とする。その具体的な研究目的は、1.市販の分子シミュレーションソフトを活用した新教材の開発、2.3Dプリンタを用いた分子計算のマテリアリゼーションによる新教材の開発、3.多人数教育に対応したオリジナルの新教材・教育法の開発、の3つである。 現段階において、高専本科5年生の卒業研究に分子シミュレーション(分子軌道法、分子動力学法)による物性解明や3Dプリンタによる分子モデルの造形化に関する研究テーマを継続的に組み込み、学生が授業で利用でき、視覚的にわかりやすい新教材の開発が進行している。今年度はグラファイトとダイヤモンドの混成軌道の違いによる導電特性の比較、グラフェン成長に関する研究、ダイヤモンド構造の特性と3Dプリンタによる造形に成功し、有用な研究成果を上げることができた。 また、3Dマテリアリゼーション化に関して、情報化技術による高速で確実な遠隔操作の実装や、3Dプリンタによる造形技術のベースとなるマイクロコントローラ要素技術について、有用な研究成果を上げることができた。 以上の研究実績から、研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究成果をベースに、学生が授業で利用でき、視覚的にわかりやすい新教材を開発するべく、分子シミュレーション(分子軌道法、分子動力学法)と3Dプリンタによる分子モデルのマテリアリゼーションを推進する。分子シミュレーションでグラフィカル表示した結果を、さらに立体的な模型にすることができれば、手に取って自由自在に構造を確認することができ、飛躍的に教育効果を高めることができる。 そして、マテリアリゼーションした新教材を活用した新教育法の開発を行う。3Dプリンタを用いて分子計算結果をマテリアリゼーションした新教材を電子系高専専門科目において有効活用するための新たな教育法を開発する。 さらに、創造性や学際性を育成できる新教材・教育法の開発を行う。シミュレーションなので実在しない分子やその集合体の安定性や性質を予測することが可能であり、自由な発想で様々な電子材料を設計でき、新機能性電子材料の開発を目指した、創造性を育成できる新たな教材と教育法を開発する。 最終的に、高専電子系専門教育における多人数教育に対応したオリジナルの新教材・教育法の開発を行う。開発した新たな教材と教育法を多人数の教育の場で展開するべく、安価で効果的な、そして高専電子系専門教育に最適なオリジナルの新教材・教育法を開発する。そして、八戸と函館の両高専の電子系専門科目への導入を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者である函館工業高等専門学校の山田一雅氏の経費使用計画に不備があり、9,146円の残額が出てしまった。 翌年度は山田一雅氏に150,000円の助成金を予定しており、今年度の繰り越し金9,146円と合わせた159,146円を研究予算として、新教育法の開発に関する研究を推進する予定である。 経費使用計画をしっかりと立て、残額を出さないように留意して、研究を推進して行く所存である。
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