研究課題/領域番号 |
16K00982
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研究機関 | 仙台高等専門学校 |
研究代表者 |
安藤 敏彦 仙台高等専門学校, 情報システム工学科, 准教授 (00212671)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 認知症高齢者介護 / 弱いロボット / Project Based Learning / 感情記憶 / 手続き記憶 |
研究実績の概要 |
当該年度では、認知症患者とロボットとの有効な相互作用の要件を明らかにすることを目的に、 (1)患者と相互作用できるロボットのプロトタイプの製作。(2)長期的に患者と成果を共にすることを前提にした、ロボットの外観や音声,挙動についての精査を計画した。そのために、研究協力先のNPOの協力のもと、(a)認知症の理解、(b)ロボットの仕様策定を行った。 まず、(a)については、申請者と研究室の学生がNPOの講師から講義を受け、認知症と記憶との関連について知見を得た。さらに、認知症者や高齢者への支援には手続き記憶と感情記憶に働きかけることが有効であるとの示唆を受けた。それに加え、NPOの紹介先のデイケア施設での作業療法士との打ち合わせから、ロボットの機能やロボットを利用した支援プログラムに関する示唆を得た。すなわち、ロボットなどの「おもちゃ」に対する興味は認知症者も健常者と変わりないこと、ただし、声を出したり動くことがあまりないので、声を出させたり足を動かせたりすることによって感情が動くので有効であることである。 上記(a)にもとづいて、(b)ロボットの仕様検討を行った。本研究では、まず「弱いロボット」の概念にもとづき、手を貸したくなる「おぼつかなさ」を認知症者や介護者に感じさせること、また、認知症者とロボットとが1対1の関係ではなく、ロボットが認知症者と介護者とを介在させることを方針とした。ロボットを用いた介護施設でのレクレーションの例として、(イ)ロボットリレー、(ロ)ロボット体操が挙がった。(イ)では声の大きい方にロボットを動かせるように、マイク4個で最大音量方向の検出、回転、直進の機能を設定した。また、(ロ)では大勢の前で体操を先導するような動作を設定した。(イ)、(ロ)を実現するため、市販のロボットを利用し、それにセンサーを追加し、実行プログラムを開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下の事情のため、進捗が若干遅れている。本研究の目的の一つは、社会的な問題解決のためにロボット開発のプロセスをPBL(Project Based Learning)として教材化することである。PBLの対象は工学系の学生であるが、機械系,電気電子情報系からデザイン系にわたる幅広い専攻を対象と考えている。そのため、ロボット開発のプラットフォームには、機械加工など専門的な技能が必要でないことが望ましい。現在、本研究は情報系の学生の協力のもとで行っている。当初は構造や動力部などもゼロから作ることを考えていたが、部品加工のノウハウがない学生が構造からロボットを作るのは想像以上に困難であることが分かった。 そこで、教材として学生が限定された時間内にある程度の成果を出せることを担保するために、制御部に拡張性が高くプログラミングがしやすい Arduino を搭載し、センサーを追加しやすい市販のロボットキットを利用することを決めるに至った。オリジナルのキットは制御部とサーボモータのみであるが、マイクロフォンや人感センサ、ビデオカメラの搭載によって、人と相互作用させるよう機能を高めることができる。センサの追加やプログラミングいよって学生がグループで意見を交換しながら仕様を決める余地があるので、教材として利用しやすいと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、(1)ロボットの機能向上とレクレーションプログラムの検討、(2)介護施設での観察と評価、(3)教材化のための整理の、3段階を通して研究を推進する。 まず、(1)研究協力者のNPOと議論を交わしながら、ロボットの機能を向上させながら、それを用いた介護施設でのレクレーションの詳細を詰める予定である。ロボットの機能には音声方向の認識だけでなく、音声からおよび映像からの感情認識の導入も試みる。介護施設ではロボットを用いてロボットリレー、ロボット体操を含めたレクレーションプログラムを行うが、1回のプログラムの中で、介護士やNPOのコーディネータによる導入から始まり、その他のゲームなどの 次に、(2)介護施設での観察では、(1)で検討したプログラムを実施し、クライアントの認知症者、高齢者がロボットに対しどのように振舞うか、特に感情に対して効果を及ぼしているのかを注意深く検討する。ロボットの機能については施設の職員の示唆をもとに、随時機能改善を行う。 さらに、(3)教材化のための整理では、開発過程と介護施設での適用の経験を整理し、PBL教材として作成する上で、授業計画を作成しながら、授業時間や学生への負荷、授業環境などについて問題点を上げ、実施に向けた検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では介護施設でのレクレーションに用いるため、基本のロボットにセンサや小型コンピュータを追加して機能を拡張する予定であった。しかし、機能の要件が定まるのが遅れたため、必要なセンサ等を購入する時期が遅れてしまい、。
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次年度使用額の使用計画 |
基本ロボットに追加する機能を実現させるため、マイクロフォン、ビデオカメラ、人感センサ等のセンサや、Raspberry Pi などの小型コンピュータ、電源ユニット等、外装の材料を購入する。
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