本研究は、「弱いロボット」の考え方をもとに認知症高齢者への介護を支援するとともに、介護に用いるロボットの開発を工学系教育機関での課題解決方学習(以下、PBL)として教材化することで、工学専攻の学生が自分が学ぶ技術が社会でどのように活かされているかを実感んできる機会を提供することが目的である。 当初は、授業計画の策定の後、学生にPBLを実際に行ってもらう計画であったが、コーディネーターの出産・育児などの事情で協力先デイケア施設での実演ができず、ロボット開発の周辺を中心に行なった。PBLを実際に行う際の課題として開発期間の短さがあり、これの補助として、プラットホームとしてのロボットは決めておき、ロボット機能のモジュールをあらかじめ用意しておく。 最終年度では、上記ロボット機能のうち、音声発話定位モジュールの開発と音声感情の認識について取り組んだ。音声発話定位モジュールについては、複数のマイクを用いて発話位置の推定する方法について検討した。ただ、現状では小型ロボットの大きさに収まらない状態である。また、音声感情認識については、音声のメル周波数ケプストラムから音声空間へのマッピングの可能性が明らかになった。今後、リアルタイム認識を目指す。 研究期間全体を通して、工学系の学生の介護現場への参加の有効性が認められた。一方、教材化については、1クォーターで行うには、開発期間の短さ、デイケア施設での実演機会の少なさなど課題も多い。今後、これらの課題の解決を通して、認知症介護支援と工学学生の社会参加を両立する教材の開発を行う。
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