最終年度の計画では、発展的な学習を促す教材開発を目的としていた。無線伝送路特性の測定は、電波伝搬・アンテナ・無線システムのすべてに関連する重要事項であるにもかかわらず、専用測定器がなければ実測が難しい。しかも無線伝送路の専用測定器は、多くの高等教育機関にとって設備することが容易ではない予算を必要とする現状がある。 そこで、ソフトウェア無線実験装置の柔軟性を活かし、927MHz帯で無線伝送路測定の実測とその検証を実施した。測定にあたっては、使用する無線信号用インタフェースの時間同期精度が十分でないことを克服するために、M系列を使用して相関により時間精度を規定する工夫を行った。 得られた無線伝送路のインパルス応答は、測定系の特性をも含んでおり、真の無線伝送路特性とはなっていない。このため、測定系の特性をあらかじめ測定し、その近似逆システムを数値計算で算出し、無線伝送路のインパルス応答に含まれる測定系の特性を除去する手法を適用した。その結果を検証したところ、振幅誤差1[dB]程度の測定精度が得られることを明らかにした。 研究期間全体を通じて、パソコンと組み合わせて使用するタイプのソフトウェア無線無線実験装置(PC-SDR)の柔軟性の活用と、PC-SDR固有の時間軸の不正確さ(無視できない処理遅延の存在と、試行のたびに異なる処理遅延の変動など)を無線信号処理手法で克服する手法について取り組んだ。本研究により得られた知見は、PC-SDRを教育に活用する際にその適用範囲を広げることを可能とすると考えている。
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