研究課題/領域番号 |
16K00989
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研究機関 | 奈良工業高等専門学校 |
研究代表者 |
三木 功次郎 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (80259910)
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研究分担者 |
直江 一光 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 教授 (00259912)
北村 誠 奈良工業高等専門学校, 一般教科, 准教授 (60341369)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己駆動型クーロメトリー / 使い捨て型電量分析セル / グルコース定量 / ピルビン酸定量 / バイオ燃料電池 |
研究実績の概要 |
自己駆動型電量分析を用いた食品中のピルビン酸の定量について,これまでの研究成果を踏まえてさらに改良を行った。教材としての使用を考え,またより高感度の測定ができるように,測定操作の簡素化,試薬濃度の最適化,測定ノイズの低減などを行い,高校生レベルでの測定を可能にした。この結果を基に, NADHの測定およびピルビン酸測定を試みた。ジアホラーゼ(NADH酸化酵素)と電子受容体としてユビキノン(UQ)を用い,この還元型UQと[Fe(CN)6]3-の酸化還元電位の差により電池を構成し,自己駆動で流れた電流よりNADH量を算出した。さらに,NAD依存性酵素である乳酸脱水素酵素を用いてピルビン酸とNADHを反応させ,残存NADH量よりピルビン酸量を求めた。既知の吸光度法で得られた値とよく一致し,0.2 mMまで測定が可能となった。実サンプルとして日本酒モロミ中のピルビン酸を測定で良好な結果が得られた。 また,自己駆動型電量分析とバイオ燃料電池の両方の実験に使用でき,簡単な構造の使い捨て型の電気化学セルの開発を行った。電極となるカーボンフェルトをラミネートフィルムに挟み込み,電気化学セルを組み立てた。従来の電気化学セルよりも電極表面積は小さくなったが,自己駆動型電量分析に利用可能なセルを作製することができた。しかし,自己駆動型電量分析で得られる電気量が理論値より約5%程度少なく,改良が必要である。また,バイオ燃料電池への利用には,電極表面積が小さくなった分だけ電解液量も少なくなり,モーターの駆動時間が短くなったが,教材として使用可能と考えられる。 これらの成果を基に,バイオ燃料電池を用いた実験カリキュラムに関して,実験実施方法の検討を行った。バイオ燃料電池を使用した実験教室では,食生活における微生物の活用を講義や実験で示すことにより,参加者の理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
自己駆動型電量分析測定セルを使い捨て型にすることにより,簡便に組み立てることが可能となり,教材として活用可能なものとなった。しかしながら,電流効率において,まだ十分な性能が得られておらず,今後さらに改良が必要である。また,自己駆動型電量分析を用いた微生物細胞活性測定の基礎的検討を行ったが,得られた電流応答が予想された値より小さかった。そのため,各種化合物の添加による基礎的な実験条件の検討などが行えておらず,さらに検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
自己駆動型電量分析を用いた微生物細胞活性測定の基礎的な検討をさらに行う。バイオ燃料電池の原理をそのまま利用することで,微生物菌体を用いた電量分析が実現できる。測定サンプルとしてグルコースなどを用い,バイオ燃料電池の場合と異なり,電量分析法ではグルコースが微生物により速やかに完全酸化される条件で(反応が生成物側に片寄る必要がある),電子受容体の還元反応の速やかな進行が必要である。微生物の選択(市販の生パン酵母の利用も検討),電子受容体となる各種キノン化合物,測定溶液pH,添加サンプル量,測定セルの設計等について研究分担者と共に検討を行い,最適化を行う。 また,使い捨て型セルを用いた自己駆動型電量分析装置によるピルビン酸測定やグルコース測定,使い捨て型セルを用いたバイオ燃料電池の実現により,新たなカリキュラムを開発する。知識の習得だけでなく,創造力,探求心,科学技術に関連する事象に対する理解力・判断力などを伸ばすために必要なカリキュラムを検討する。単に面白い,興味を持つだけの授業・実験ではなく,バイオ・エネルギー・環境・定量分析などに関して総合的に学習でき,定性的,定量的な議論ができる指導を目指す。
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