研究課題/領域番号 |
16K00992
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
長岡 史郎 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 教授 (30300635)
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研究分担者 |
堀邊 英夫 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (00372243)
下川 房男 香川大学, 工学部, 教授 (90580598)
山本 雅史 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 助教 (60733821)
清水 共 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 講師 (40455168)
JOHNSTON ROBERT 香川高等専門学校, 電子システム工学科, 准教授 (60743698)
鹿間 共一 香川高等専門学校, 電気情報工学科, 教授 (70206069)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Sol Gel / 熱拡散 / リソグラフィー / pn接合 / MOS FET / 簡素化 / 教育 |
研究実績の概要 |
プロセス実現のための鍵となる大気環境下におけるSol-Gel剤で作製したPhosphorus Silicate Glass(PSG)膜、Boro Silicate Glass(BSG)膜を用いた熱処理によるリン(P)とボロン(B)の熱拡散の詳細制御を検討評価した。同じ条件で同様の拡散が得られることを目標として、PとBの濃度をできるだけ高くした材料 (Filmtronics社製、Pの拡散にはP8545SF、Bの拡散にはB2O2とB40XM)を特注した。 Pの拡散は温度と時間により再現性よく制御できた。Bの拡散は高分子系の材料であるBX40Mにより濃度と拡散深さが少し低下するものの制御性よい拡散特性を維持しかつパーティクルの問題を解決できた。拡散係数の差により同じ不純物濃度の拡散深さを得るため10倍程度の時間差はあるが、制御性よくPとBの拡散させることができた。 nMOS FET及びpMOS FETを実現するため、シリコン基板上の全面に作製したPSG膜、BSG膜をリソグラフィーにより、拡散させたい部分にのみ残し熱処理することで、イオン注入と同様のPやBの選択的な拡散を実現する“選択拡散”方法を提案、その可能性を検討した。予想したリソグラフィ中の薬液処理によるPSG薄膜及びBSG薄膜中のPとBの濃度変化の発生と熱拡散特性への影響は、焼結温度の調整により解決し、Pと同様に拡散させることができた。さらに水素ラジカルを用いたレジストの剥離プロセスについて検討した。その結果焼結処理した多孔質のPSG薄膜上に塗布したレジストも剥離できることを確認できた。 さらにCMOSを実現するため、Pの選択拡散及びBの選択拡散を同一基板上で同時に実現する“同時選択拡散”方法について検討した。その結果、同時選択拡散が可能であることを実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全てのプロセスを大気環境化で実施できる簡素化作製プロセスの実現のため、制御性、再現性が良好なPとBの不純物拡散及び選択拡散実現のための基礎検討を実施した。 PSG、BSG膜作製用のSol-Gel剤には、同じ条件で同様の拡散の実現を目標として、不純物(PとB)濃度を調整したP8545SFとシリカ系のB2O2を特注した。両者とも、PとBの拡散は制御性よく実現できたがBの場合約5~数10μmのパーティクルが基板全面に発生しフィルタリングや超音波処理では改善困難であった。この原因がゲルの凝集と考え、高分子系の母材でBを同程度の量含むBX40XMを特注し同様の実験を実施した結果、拡散深さと不純物量は低下するが再現性よく拡散できパーティクルの問題も解決できた。 イオン注入と同様、PやBを選択的に拡散させることを目的として考案した選択拡散法について並行して検討した。リソグラフィの薬液処理によりパタン加工したPSG及びBSG薄膜中のPとBの濃度が変化し熱拡散特性が阻害されると予想し、リソグラフィに使われる全ての溶媒に対する拡散特性への影響を調べた。その結果、PSG薄膜では拡散特性に変化はなかったが、BSG薄膜ではBは拡散しなかった。これは、焼結温度を500℃から600℃に変更することで解決でき、Pと同様に拡散させることができた。B40XMについても現在検討中である。さらに、選択拡散するPSG、BSG膜をリソグラフィ時の現像剥離の処理溶媒に触れない様にするため、水素ラジカルを用いたレジストの剥離プロセスについて検討した。その結果、焼結処理したPSG、BSG薄膜上に塗布したレジストは水素ラジカルで剥離できることを確認できた。 CMOSを実現するため、Pの選択拡散及びBの選択拡散を同一基板上で同時に実現する“同時選択拡散”方法について検討した結果、同時選択拡散が可能であることを実証できた。
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今後の研究の推進方策 |
理科室の環境化でデバイスの設計製作評価を実現するためには、不純物拡散制御に加えて、(1) 真空装置を用いず作製できる電極の作製方法、(2) MOSトランジスタを作るためのゲート絶縁層となる絶縁膜の作製、(3) デバイスパタン作製のためのフォトリソグラフィの簡素化が必須である。これらについても検討を継続し実施可能なプロセスを構築する。 リソグラフィでは、フォトマスク設計作製改良が簡単に行えるフォトマスク作製方法とマスクの位置合わせが不要露光装置があればよい。これには事務処理用ソフトウェアの作図機能を使ったフォトマスクパタン設計とOHPシートを使ったフォトマスク作製方法と、ピンアライメントを応用した専用の位置合わせ治具によりマスクアライメントを省略し、装置を簡素化した“アライメントレスリソグラフィ(ALL)方法”を併用し実現する。 デバイスの絶縁層及び素子分離用の絶縁膜として大気中で作製した熱酸化膜(SiO2膜)を利用しているが、拡散の前に拡散温度と同様の温度で熱酸化膜を作製するため、その後に実施するPやBの拡散に少なからず悪影響を及ぼしている。ランプアニール装置等を使用し原因究明とプロセスの改善検討を行う。さらに性能改善及び微細化を目的として大気圧CVD法による酸化シリコン薄膜及び窒化シリコン薄膜作製に関する検討を継続する。 電極作製の簡素化を実現するためには、真空装置を用いない方法が必要である。そこで、Ag含有導電性ペーストとシリコンの異方性エッチングを併用して実現を図る。この処理には、表面温度の時間制御が非常に重要になる。これにもランプアニール装置を用いてそれを実現する。 上記の方法を生かした簡素化nMOS FET作製プロセスの確立する。さらに、pMOS FETやCMOS FET作製プロセスに応用し、理科室で構築するナノテクプラットフォームの限界と可能性を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験を実施しながら、当初予定してた赤外線導入加熱装置の仕様を詰めていた。実験の途中で、本研究遂行に有意義な新規の応用が出てきたため、装置の基本構成は同じで、拡張性を持たせられる構成に変更したため。
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次年度使用額の使用計画 |
不純物導入のための熱処理のみならず、電極の焼結のための表面温度の詳細制御ができるよう、また、水素ラジカルによるレジスト剥離の基板加熱など、今回のプロセス検討全般に応用できるよう赤外線加熱装置に機能を付加する。
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