主にぐんま天文台の150cm望遠鏡を用いて、接眼分光器を活用した天体物理学の教育手法の研究を継続的に行った。接眼分光器は、天体の色とスペクトルを同時に見比べることのできる光学観察装置であり、我々が独自に開発・製作したものである。観望用接眼部を持つ大型望遠鏡に用いれば、その巨大な集光力により、直接触れることのできない遠方の天体の性質を客観的に計測・調査する天体観測の基礎的な原理を直感的かつ効率的に理解することが可能である。 天体の観察を通じたこれまでの実践から、接眼分光器における色を示す直接像の視野や拡大率、スペクトル像の大きさや波長分解能などについて、さらなる微調整を加えた方がより効果的であることが判明しており、今年度はそれらを具体化するための変更を装置に加えている。改良がなされた新型の接眼分光器を実際の望遠鏡で利用してみたしたところ、ほぼ理想的な光学特性が実現され、天体物理学の直観的な理解により効果的な装置となっていることが確認された。北海道大学の160cm望遠鏡などでもその効果は同様に確認されており、装置開発の対象となったぐんま天文台の150cm望遠鏡のみならず、他の望遠鏡であっても、同規模のものであれば本研究で目指すような教育手法に対して汎用な効果を持つ装置となっていることも確かめられている。 これまでにも、化学組成の違いにより分光特性が大きく異なる晩期型星や、水素のバルマー系列の吸収線が顕著ななA型星の観察が特に効果的であることが判明していたが、波長分解能が向上したことにより、G型からK型の恒星で金属による吸収線を認知することがより容易になったり、特定の輝線のみで光っている星雲状の天体のなどの特性を観察することが可能になったりしており、より広範な方面で天体物理学の理解を深めることが可能になっている。
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