研究課題/領域番号 |
16K01000
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
早岡 英介 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任准教授 (10538284)
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研究分担者 |
信濃 卓郎 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 東北農業研究センター, センター長 (20235542)
鳥羽 妙 尚絅学院大学, 環境構想学科, 准教授 (70437086)
池田 貴子 北海道大学, 高等教育推進機構, 博士研究員 (70773844)
川本 思心 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90593046)
種村 剛 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任助教 (20759740)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リスクコミュニケーション / 科学技術コミュニケーション / 放射能リスク / 福島復興 / トランスサイエンス / 福島第一原発 |
研究実績の概要 |
2016年度は、代表者の早岡が主担当となって、北海道大学CoSTEPにおいてリスクコミュニケーション選択実習を開講した。参加した学生は農学部、薬学部、工学部、理学部、環境科学院など6名、社会人も高校教員、民間企業などから4名が受講した。本実習の目的は、リスクコミュニケーションを主体的に担う人材育成である。 科学的妥当性を一方的に伝えても人々の不安は解消されない。また信頼の土台が適切に構築されているのかどうかも重要である。そして、そのリスクが現在の社会的条件に照らしてどの程度なら受入れ可能なのかは、科学が解決する問題ではなく、社会の側の合意事項となる。低線量被ばくに関する正確な知識を学び、福島第一原子力発電所周辺の町村を訪れ、復興の現場を見学し、聞き取り調査や放射線量の計測などを行った。また現地の方々の生活や健康への不安など地域の実情を理解して、ふさわしいコミュニケーションの場を作ることを目指した。 2泊3日の福島滞在の中で行った取材や調査をもとに、福島県川内村の「いわなの郷体験交流館ふれあいホール」にてワークショップを行った。復興庁の木幡浩福島復興局長や遠藤雄幸・川内村長、井出茂・川内村商工会長らも参加して、「新しい東北」官民連携推進協議会・連携セミナー制度による講習という位置づけで実施した。受講生は2班に分かれ、A班は「もし、泊原発で事故が起ったら?~福島から得た教訓~」、B班は「10年後の日本社会を先取り!!スマートシティ・相双コンペ」と題して、リスクコミュニケーションのためのイベント企画案を発表した。 さらに獣害対策に関する事例研究も平行して進めており、北海道のエキノコックス対策のためのリスクコミュニケーション手法も模索している。リスコミの手法は、問題の種類や風土によって変わってくるはずなので、これらの知見を福島の問題の参考とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度はリスクコミュニケーション教育カリキュラムの予備調査として、7月21~23日に福島県川内村、葛尾村を環境科学院修士1年の学生とともに訪れ、現地取材を行った。その調査では行政や村民の方々から有益な情報を得ることができた。 またその結果を9月21~23日の合宿形式のリスクコミュニケーター養成プログラムにスムーズにつなげることができた。川内村で実施したこの合宿では、復興庁の協力も得て、川内村民の皆様にもご来場いただき、成果発表を川内村・いわなの郷レクチャーホールで行うことができた。関係各機関の協力のおかげにより、1年目の到達点としては目標どおりに進展したといえる。 また哺乳類学会でも獣害対策に関するリスクコミュニケーションの発表が増えてきており、それらの事例を参考にしつつ、並行してエキノコックス関連のリスクコミュニケーション手法も探索している。こうした知見もあわせてリスクコミュニケーター育成手法に生かしていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後は2016年度に村民の皆様と良好な関係を構築することができた川内村を拠点として、国立保健医療科学院生活環境研究部や長崎大学などとも連携して、さらに地域のリスクコミュニケーション事業を具体化させていく。 とりわけ6年目を迎えた福島では、単純な放射能リスク情報を伝えるフェーズはとうに過ぎ去り、これからは帰還へ向けた本格的な復興プロセスが始まろうとしている。だが、家族環境や就労・補償の条件など、社会的な状況は厳しさを増す一方である。 これまでは学生が福島に訪ねていくことを活動の中心に置いていたが、より現地の実情を深く知るために、2017年度からは福島の方を札幌にお呼びして様々な話をじっくり伺い、札幌でも交流する場を設けたい。 このような活動を通して福島の今を詳しく知り、被災者の置かれた社会的環境に寄り添い、現地で何が求められているかを汲み取っていきたい。また時々刻々と変化するこうした現状を、科学者コミュニティや日本社会全体に伝えるためのコミュニケーションも丁寧に重ねていくつもりである。
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次年度使用額が生じた理由 |
2016年度はリスクコミュニケーション教育カリキュラムの予備調査として、7月21~23日に福島県川内村、葛尾村を学生1名とともに訪れ、9月21~23日の合宿では学生6名、社会人4名と訪れたが、一部は復興庁からNPO「元気になろう福島」を経由しても、本授業に対する予算措置が一部、とられたため、全額負担する必要がなくなった。また全体予算の配分が判明したのは、2016年9月初旬であった。
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次年度使用額の使用計画 |
2017年度も同様に学生と社会人あわせて10名程度と福島で合宿形式の実習を行うため、本予算を旅費の一部に充当する予定である。またリスクコミュニケーションに関する最新情報を入手するための書籍や雑誌も購入する。
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