福島県,特に小中学校で実施されてきた放射線教育の諸課題(一部先進校や教員のみの実施,高校・大学での未実施)の解決のために過去2年間小中学校,高校,大学における放射線教育の実践内容を調査し,教育プログラム開発に携わることで各種学校の接続時の課題を抽出してきた。最終年度は,2年間で得られた福島県内外の小中学校・高校等での放射線教育の実践,新たな取り組み支援,交流を通じて放射線教育の新たな視点を得ることを目的とした。成果と課題等は以下の通りである。 (1)県外の中学生と高校生との福島に関する交流学習が継続発展し,福島県内の被災地域視察等を通じ,県内外の視点や生徒の視点での放射線教育の課題や新たな方向性が示された。(2)市販の教材活用だけでは「放射線の性質理解」という限界があり,例えば福島県外の児童生徒には,福島県の地方紙や付随する折り込み広告などが学習の際に効果的であることが判明した。実際にそれらを活用した学習発表会の実施にいたった。 福島県内在住者には気がつかない教材発掘を提案できた。(3)県内小中学校での取り組みが放射線教育から復興教育へと変化がみられる中で,本研究での成果を県市町村教委で実施する研究授業や教員研修会等で学校や教員へ提供できた。(4)教材化・協力校での成果物の収集。小中学校での実践後に作成する報告書には過去に本研究で作成したフォトブックやパンフレットでの可視化が取り入れられ独自に作成する学校が増えた。(5)各種学会等での情報発信。原発事故以降7年が経過し,学会等では関連する研究が激減する中,福島県内の放射線教育の実態報告は貴重な事例となり,同課題に取り組む研究者間で新たな連携を模索できた。 以上のように福島県内外で同課題に取り組む協力者間で課題を共有し,今後の実践的研究に向かう方法がひとつ示されたことは大きな成果といえる。
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