組込み技術は我が国の豊かさの源泉である。組込み技術関連産業は、我が国の国内総生産(名目GDP)の13%程度、並びに輸出の過半数を占めており、まさに我が国の基幹産業である。組込み技術は、ハードウェアとソフトウェアから成る高度な統合的技術であるが、このような組込み技術の存在や働きは、従来、学術的に重視されておらず、一般社会でも認知されていない。特に、学校教育における取り扱いは、小学校・中学校・普通高校のいずれの学習指導要領においても圧倒的に不足している状態である。それ故、組込み技術を志す若者は少なく、組込み技術者は慢性的に不足しており、その育成が国家的な喫緊の課題である。 そこで本研究では、(1)「高機能なマイコンを活用したネットワーク接続型異状通報システムを開発し、本システムを題材とした最先端の組込み技術事例について、児童・生徒に体験的に学習させる組込み技術教材を開発すること」、(2)「開発した教材を活用して、学習効果を高める授業構成やカリキュラムを検討・構築すること」を目的とする。これにより、児童・生徒が組込み技術に積極的に関与する態度が期待できるとともに、我が国のものづくり産業に積極的に関与する人材の育成に資することができると期待される。 平成31年(令和元年)度には、以下に示す各事項について実施した。 1.体験的学習を行うためのネットワーク接続型組込み技術教材の一例として、学校教育にて製作可能であることを念頭に置きながら、入手性並びにコストの優位性及び取扱いの平易なマイコン及び無線通信モジュールを用いて異状通報システム等の開発を行った。特に、テキスト情報だけでなく、画像等の多様な情報を通知可能なシステムを目指した。 2.平成29年3月に告示された新たな中学校学習指導要領を念頭に置いて、特に新規学習事項に重点を置いた組込み技術教育の学習可能性、並びに系統的な指導内容の検討を行った。
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