研究課題/領域番号 |
16K01010
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
二宮 裕之 埼玉大学, 教育学部, 教授 (40335881)
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研究分担者 |
相馬 一彦 北海道教育大学, 教育学部, 教授 (40261367)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 数学教育 / 授業力 / 潜在的授業力 / よい授業 |
研究実績の概要 |
本研究の目的(1)「日米双方の研究者・実践者が日本の『よい数学の授業』を検討することで、『日本の数学教育関係者にとって暗黙の前提となっている潜在的授業観・授業力』の顕在化を試みること」に関しては、アメリカ・ユタ州 Brigham Young University のDouglas Corey准教授と継続的に議論を進めた。Corey准教授とは週に1回のペースでインターネットを介して標記課題について検討を深め、今年度はその成果を論文に纏め学術誌に投稿した。査読を経て無事受理され、今年度中に出版される予定である。昨年度に来日し、日米合同授業研究会の一環として日本の学校で授業を行った、Matthew Melville教諭(現University of Delaware博士課程大学院生)とも継続して連携を取り研究を進めている。Melville教諭は日本語に堪能であることから、日本の算数・数学教育研究サークルに、インターネットを介して参加してもらい、日米の授業の違いなどについて議論を深めている。 目的(2)「日本の研究者・実践者が協力し授業研究を進めることで、「よい数学の授業」の本質を更に追究し、その外延と内包を明らかにすること」については、国内での授業研究会を引き続き精力的に進めた。今年度は11月に旭川で、1月に東京・埼玉で授業研究会が行われ、研究代表者・分担者をはじめとして、研究協力者として埼玉・北海道・東京の現職教員が参加し、検討会では活発な議論が展開した。具体的には、「平面図形」「比例と反比例」「三平方の定理の利用」「確率」「割合」「確率」の6つの研究授業を行い、『よい授業』の外延の一端を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Douglas Corey准教授との議論の成果は、論文「Values of the Japanese Mathematics Teacher Community」として纏められ、今年度中にSpringer社より出版されることになっている。この論文では、日本の数学教師が持つ「価値観」のうち典型的なもの8つを取り上げ、それが確実に日本の教師に特有のものであることを実証的に明らかにしている。また、日本の算数・数学教師が持つ価値観について、教員コミュニティ形成の過程を事例として纏めたものが、共著論文として、Springer社より刊行された書籍『Mathematics Lesson Study Around the World』に掲載されている。 一方で、平成29年度は、11月に旭川で、1月に東京・埼玉で授業研究会を行った。具体的には、11月8日:旭川市立緑が丘中学校 1年「平面図形」(那須はるか教諭)、旭川市立神楽中学校 1年「比例と反比例」(中本厚教諭)、1月15日:東京学芸大学附属世田谷中学校 3年「三平方の定理の利用」(鈴木誠教諭)、世田谷区立用賀中学校 2年「確率」(石綿健一郎教諭)、1月16日:東松山市立新宿小学校 6年「割合」(稲葉昌弘教諭)、吉見町立西小学校 2年「かけ算」(小林徹校長)である。それぞれの授業研究会には、研究代表者・分担者をはじめ、協力者として本科研に協力いただいている現職教員が参加した。授業後の検討会では「よい授業」の要件として、①本時の目標は明確であったか、②問題と問題提示の仕方が工夫されていたか、③児童・生徒の考えの取り上げ方は工夫されていたか、について活発な議論が行われた。
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今後の研究の推進方策 |
平成25~27年度に本科研と同じメンバーで進められた科研 基盤研究C(研究代表者:相馬一彦、課題番号25350183)の研究成果である共著書『理論×実践で追究する! 数学の「よい授業」』(明治図書、2016)の英訳作業は、平成29年度から引き続き進める。既にほとんどの日本語の英訳は終わっているが、日本の数学教育の実際についての予備知識の無い読者には、そのまま英文書籍にしただけでは十分な情報提供ができないと考え、Brigham Young UniversityのPeterson教授、Corey准教授と連携して、解説のための章の作成を進めている。平成30年度中には英訳本の出版に目途をつけたい。 並行して、日米合同授業研究を進めることが、本科研におけるもう一つの柱である。平成29年度は専ら、日本国内において授業研究が進められた。6つの研究授業後の検討会では、「よい授業」の要件として、①本時の目標は明確であったか、②問題と問題提示の仕方が工夫されていたか、③児童・生徒の考えの取り上げ方は工夫されていたか、について活発な議論が行われたが、その成果をアメリカの研究者ときちんと共有できずにいる。これらの検討の成果をアメリカ側と共有するとともに、平成30年度に行われる授業研究会では、アメリカからの参加も視野に入れて計画を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成29年度は、アメリカ訪問調査の日程調整がうまくいかず、実施されなかった。その分の予算を次年度に繰り越し、平成30年度に行うこととする。
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