最終年度には、当初研究実施計画にもとづいて、前年度までに実施した疑似科学・超常現象に対する信奉の規定因に関する調査研究を継続的に実施するとともに、これまでの分析結果を総合して、従来措定されていた信奉における欠如モデルの修正が必要であることを学会等にて報告し、今後の研究に向けての知見の整理と考察を行った。 前年度までに中学高校生を対象として行ったCEST(Cognitive Experiential Self Theory)にもとづく調査分析から、自己報告された情報処理スタイル(直観性)だけでなく、意思決定課題のパフォーマンス指標として得られた連言錯誤のレベルが、代表性ヒューリスティックによる判断を介して疑似科学信奉と関連する可能性があることを明らかにした。この成果は日本心理学会第82回大会で発表した。 平成30年度には、前年度までの中高生調査と対応した大学生261名への継続的調査を行い、情報処理スタイルおよび科学的思考の基盤となる批判的思考態度と疑似科学信奉の関連についての検討を行った。疑似科学信奉尺度の構成を再検討し、精緻化して調査分析を行った結果、信奉における直観的処理の一貫した影響を確認するとともに、批判的思考態度が一部の疑似科学信奉を促進する結果を得た。これは、疑似科学信奉が、合理的思考や科学的態度の不足で促進されるとする欠如モデルの修正を示唆する重要な成果と考えられる。この結果については次年度の日本心理学会第83回大会で発表することとし、中高生から大学生の総合分析を行った成果を論文として投稿準備を行った。 また、同調査を大学授業で実施する過程で、疑似科学信奉を批判的思考教育の教材として試行するとともに、当初計画から発展する形で批判的思考と科学リテラシーが成績におよぼす影響についても評価を行い、その成果を日本教育心理学会第60回大会にて発表した。
|