本研究は,教師の授業力量の中核をなす省察的実践力の形成に焦点をあて,多様な成長段階にある理科教師を対象として省察的実践とその実践力の実態・特徴を解明するとともに,理科の授業実践の事実や文脈,実践知などが埋めこまれた省察的実践の事例を学習材として再構成し,教師の省察的実践に関する学びにおける学習材の有効性について検討することを目指した。 研究期間の延長が認められた令和4年度は,これまでに実施した授業観察やインタビュー調査により収集された調査資料をもとに,省察的実践とその実践力の実態や特徴,授業観との関連に関する分析・考察の精緻化に取り組むとともに,授業実践における教師の省察の具体について,授業の映像記録の視聴やプロトコルの読み取りを通して教師志望学生が思考しながら学ぶための学習材の作成に取り組んだ。学習材の作成(すなわち,学習材としての事例の再構成)においては,一つの理科授業を事例として,具体的な省察の内容について思考し学ぶ価値があると思われる授業場面をいくつか抽出し,その場面について提示する問い(省察の具体に関する学びを生起させるための問い)と,その問いをめぐって教師志望学生が思考したり意見交流したりすることを通して学ぶことが期待される,教師の具体的な教授的行為の背景となっていた思考や判断,実践知などとを関係づけて整理した。そして,この開発した学習材を活用した教師志望学生対象の学びの場を設定し,省察的実践に関する学生たちの学びの実態について検討した。 研究期間全体を通した本研究の成果として,理科教師を対象とした省察的実践の実態や特徴等が事例的に明らかにされたこと,その事例を省察的実践に関する学びのための学習材として再構成されたこと,その学習材の活用が省察的実践に関する教師志望学生の学びにとって有効であることが示唆されたことをあげることができる。
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