研究課題/領域番号 |
16K01021
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
西野 秀昭 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40198487)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | きん肉 / ホウセンカ / 水の通り道 / 観察・実験 / 科学性 / 再現性 / 根拠 / データベース |
研究実績の概要 |
研究題目の「…生命生物観察実験の再現性と科学性に資する根拠データベース構築」のうち,今年度は「科学性」に関する研究を主に行った。一つは,小学校4年生理科「わたしたちの体と運動」における,うでを曲げる,伸ばすときの筋肉のはたらきを学ぶことができるモデル,「Hand-made(手まで)モデル」の開発である。市販の教材モデルでは筋肉部分にゴムが使われている。しかしゴムが伸びたり縮んだりするしくみは,実際の筋肉が伸び縮みするしくみとは全く異なる。そのことを子ども達が認識できるのは,高校生になって,たまたま理科教科のうち,4単位の「生物」を履修する場合である。高校で4単位の「生物」を履修する生徒数は大学進学先とリンクしているため全員ではなく,生徒数が限られているのが現状である。従って,科学的な筋肉の収縮のしくみを理解して成人する子ども達が限られることになり,理科教科の目標にある「…,科学的な見方や考え方を養う。」ことに繋がらない。このような懸念から,「Hand-made(手まで)モデル」を作成し,小学生の親子等に評価をしてもらった。これは筋肉の収縮がアクチンとミオシンの両フィラメントがエネルギーを消費して「滑り」込むというしくみを反映して,両手にはめた赤手袋の指を互いに滑り込ませるようにして筋肉の収縮を表現したものである。上腕二頭筋側と上腕三頭筋側で,2名で各筋肉部を受け持ち,一方が縮んだら一方が自然に伸びるしくみをも反映している。市販のものに比べて,小学生親子には概ね好評であった。また,小学校6年生理科の「植物の成長と水の関わり」では,「根からとりいれられた水が(植物体の)どこを通るか調べる」ための観察・実験において科学性に欠ける部分があり,これを改善する研究成果等も得られている。今後は,本研究成果が安易なコピペに利用されないようにデータベース化する手段を精選したいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に計画していた本研究課題の進捗状況は,おおむね順調に進展している。小学校や中学校での生命・生物観察実験の難易度を数値化することで「実施困難度」を各観察・実験で表示することは,小学校・中学校の先生方へのアンケート結果で「困難」とされた,すなわち「再現性」がない,とされた観察・実験で改善したもので,各種教員研修や免許状更新講習等で先生方のご協力を得て,また学生実験等でほぼ終了している。また,小学校・中学校での生命・生物観察・実験で,先生方が気がついておられない「科学性」に欠けるものについても,改善した観察・実験の検討及び評価をアンケート調査することはほぼ終了している。例えば,小学校6年生理科「植物の水の通り道」では,ホウセンカを土から引き抜いて根を洗って色水に浸して「水の通り道」を染めている。しかしこれは,土から掘り取ったこと及び根を洗ったことによって根がちぎれており,その傷ついた根の部分から色水の色素が染み込んでいることに気がついておられないことは学会発表でのポスター発表を活用して小学校の先生と対話することや,小学校の先生方の教員免許状更新講習でのアンケート結果から明らかになっている。本研究代表者は,鉢植え状態で,土にハサミを入れて根を切らない限り,灌水した色水の色素が植物体に入らないことを確認している。この観察・実験の「科学性」を維持するために,根を傷つけずに色素を根から取り入れさせるための方法として,灌水した色水が植木鉢の底穴から漏れてくる状態で植木鉢の高さ三分の一程度の「腰水」にすると,96時間ほどで植物体の導管相当部分が色素で染まっているのを確認できる簡便な実験方法を開発した。更に高等学校生物での実験研究を意識した授業改善など研究成果を挙げて研究論文として発表している。そのデータベース化では,近年問題となっている安易なコピペに利用されないよう工夫を検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度前半に,研究成果をデータベース化し,その評価を,平成30年度後半にまとめて本研究成果として整理する予定であるとともに,本研究代表者がまだ気がついていない「再現性」が認められない観察・実験や,「科学性」に欠ける観察・実験の改善案を検討・提案し,データベースへ追加し,さらに評価をまとめる。また,新しい学習指導要領理科編での観察・実験の「再現性」と「科学性」を維持・向上させるためのはたらきかけを行って行く。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用したが,効率よい使用を心掛けたことと,購入する物品によっては他の経費で購入を行ったことによって次年度使用額が生じたものと考える。この次年度使用額は平成30年度でも効率の良い使用を心掛けたい。
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