研究課題/領域番号 |
16K01025
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
小倉 加奈代 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 講師 (10432139)
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研究分担者 |
高田 豊雄 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (50216652)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フィッシング / 標的型攻撃 / 批判的思考態度 / 認知的熟慮性-衝動性 / 警告ダイアログ / 訓練型学習教材 |
研究実績の概要 |
本年度は以下4つの課題を実施した.(1)ユーザのサイト真偽判断行動と心理特性との関係性の解明,(2)スマートデバイス上での重要情報送信時のスワイプ操作を取り入れた警告ダイアログの設計と実装,(3)複数の評価サービスの統合によるサイトの安全性提示手法の検討,(4)動画コンテンツを利用した標的型攻撃学習教材の開発 (1)では,メール・サイト真偽判断実験結果とPCの習熟度レベル等の基本属性,心理特性との関係性を検討した,その結果,真偽判断には,PC・スマートデバイスの習熟度レベルが関係すること,熟慮性の高いユーザよりも衝動性の高いユーザがメールやサイトの真偽にかかわらずURLをクリックしやすいこと,サイト真偽判断実験の一部の設問について,正解群のほうが批判的思考態度の客観性,証拠因子の得点が高いことを確認した. (2)では,スマートデバイス上で警告ダイアログ表示を確実に読んだ上で,重要情報を送信するか否かをユーザに判断させるため,スワイプ操作を導入した警告ダイアログの設計と実装を行い,その有効性を評価した.その結果,前年度実装した手法よりも警告内容を注視することを確認した. (3)では,短縮URLを対象に,複数のWebサイトの安全性評価ツールの評価結果に重み付けし,サイトの安全性提示手法を検討・実装し,基本性能を評価した.その結果,正解率95.33%が得られ,重み付け未適用の場合よりも高い性能で安全性判定が可能であることを確認した. (4)では,特に人間を狙った標的型攻撃への耐性を高めることを目的とした動画コンテンツを利用した訓練形式の標的型攻撃対策学習教材を開発し,その有効性と使用感を評価した.その結果,特にセキュリティ意識に関して学習効果が高いこと,セキュリティやリテラシ知識の事前レベルが低い学習者でも理解しやすい教材であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,ユーザの心理・行動特性を考慮した偽メール・サイトに対する注意喚起を主とした検知支援により,技術とユーザ自身の能力の両面からフィッシング犯罪を防止することを最終目標としている. 最終目標のうち,技術によるフィッシング犯罪の防止については,現在までに,前年度のサイトデザインに対する直感を取り入れた検知手法,前年度と今年度で実施したスマートフォン上の警告ダイアログの検討と実装,今年度の複数の安全性評価ツールを統合したURLの安全性提示手法の研究によりほぼ完了した. ユーザ自身の能力によるフィッシング犯罪の防止については,フィッシングか否かの判断及び回避行動と心理特性との関係性に関してさらなる調査が必要であるが,今年度の標的型攻撃学習教材の開発により一定の効果を上げることができた. 以上により,研究全体としての進捗はおおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,偽メール・サイトに対する安全性提示や注意喚起を主とした検知技術とユーザ自身のフィッシングに関わる知識やリスク感度を高めることの,技術とユーザ自身の能力の両面からフィッシング犯罪を防止することを最終目標とする. 進捗状況にも記載の通り,検知技術に関連する作業はほぼ完了しており,ユーザ自身のフィッシングに関わる知識を高める点に関わる作業についても現在までに一定の成果を上げることができており,今年度はユーザ自身のリスク感度を高める点に関わる作業に重点を置き,その他,現在までの成果を総括・統合する作業を実施する.なお,ユーザ自身のリスク感度を高める点に関わる研究については,一般市民を対象としたパネル調査を実施することを検討しており,調査を実施した場合,データの分析や検討に時間を要することが予想されるため,研究の終了期間を1年延長する可能性がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)サイトの真偽判断行動と心理特性との関係性の関わる研究について,外部委託により規模のやや大きなパネル調査を実施することを予定していたが,所属機関内でのみ調査を実施したため,そのための支出額が生じなかったため,次年度使用額が生じた.また,現状の研究進捗状況と成果では雑誌論文への投稿が難しいと判断したため,雑誌論文採択時の投稿料の支出が生じなかったことや,研究外の業務の都合により海外発表が叶わず,海外への旅費の支出も生じなかったため,次年度使用額が生じた. (使用計画)次年度使用額は,パネル調査への支出を最優先とし,残りを雑誌論文投稿や旅費に充当する予定である.
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