研究課題/領域番号 |
16K01037
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
浅賀 宏昭 明治大学, 商学部, 専任教授 (80231877)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 多細胞動物 / 細胞 / 培養 |
研究実績の概要 |
哺乳類の細胞を培養するためには、無菌操作のためのクリーンベンチと、5%二酸化炭素中で保温できるインキュベーターが要る。しかし、いずれも高価で大型の装置のため、中学・高校では、動物細胞の培養は、再生医療等の関連話題として授業等で触れることはあっても、実施はできていない。本研究では、この問題の解決を目的としてさまざまな検討をしているところである。 2016年度には、廉価な材料で省スペースのクリーンベンチとインキュベーターを自作した。クリーンベンチで無菌操作ができること、インキュベーターは培養液のpHが数日間は適切に保たれることまで確認した。 2017年度は、このインキュベーターで細胞を培養可能なことを確認したが、幾つか問題があることも判明した。一つは、二酸化炭素の供給のためにポリプロピレン容器を加工してチャンバーを作製しなくてはならず、さらに別容器内で発生させた二酸化炭素を測り取ってチャンバーに移すのは煩雑で負担なことである。これらに加え、チャンバー内の温度も安定しなかった。そこで、まず容器をそのままチャンバーとして培養できる方法として、培養開始時にチャンバー内部でクエン酸水溶液に重曹を加える方法を検討した。予め必要量の二酸化炭素を出しうるクエン酸と重曹を測り取っておき、これを使うことで5%二酸化炭素存在下にて培養可能となった。保温については、フィルム状薄型パネルヒーターから、足温器用の厚型パネルヒーターに変更し、さらにチャンバーの外側をより大型の発泡スチロール製の容器で覆うことで温度を安定させることができた。 このほか細胞の観察方法についても、スマートフォンを用いた顕微鏡観察法を検討し、試料への光の当てる角度によっては、生細胞が観察しやすくなることを確認した。別の方法として、細胞に予め色素を取り込ませてから観察する方法も検討したが、最適条件の決定には至らなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2017年度の夏ごろ、研究代表者の高齢実母の健康状態が急に悪化した。研究代表者本人が介護や入転院の付き添いをする必要が生じ、これが影響して、当てにしていた研究時間が十分に取れず、研究の進行が予定よりも遅れてしまった。
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今後の研究の推進方策 |
高齢実母は、今年4月に施設に入所できた。また、研究代表者は、勤務先の大学において2018年度の「特別研究者」に選ばれ、授業負担が軽減された。従って、昨年度のように研究のために時間が取れなくなることはなくなった。本研究のこれまでの遅延は、単に時間が割けなかっただけであるので、研究計画は基本的には変える必要はないと考えている。 スケジュール的には、7月までに、これまでの研究成果をやや急いでまとめて遅れを取り戻し、実践研究に移そうと考えている。幸い、昨年度のうちに申請しておいた、日本学術振興会の「ひらめきときめきサイエンス」に採択されたので、本研究のこれまでの成果を活かす場を、夏休み期間中に得ることができた。これは、中学生を相手に研究成果を実践できる貴重な機会ととらえている。これを活かして遅れていた本研究課題を飛躍的に発展させられると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年度については、研究時間が充分にとれず、研究の遅延に伴って、研究費も予定通りに使用できなかった。細胞の培養実験には、ランニングコストもかなりかかるが、この分を使わなかったという点が大きい。 2018年度は、2017年度に予定していたが十分に実施できなかった細胞の観察方法、細胞機能の視覚化の検討なども進めねばならない。当然、これらの検討のためには細胞の培養実験に関わるランニングコストがかかるが、これについては当初2017年度に使用予定であった研究費を充てる計画である。
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