本研究では、中学、高校、および大学教養の授業等において、哺乳類の細胞の培養と機能の観察を可能にするため、様々な検討を行った。 2016・2017年度において、自作した簡易クリーンベンチとインキュベーターを用いることで、哺乳類の細胞の培養ができることは確認した。これは廉価な材料で省スペースでもあるため中学・高校でも実施可能な培養実験法である。しかし培養細胞の観察には位相差顕微鏡が必要だが、これを常備している中学・高校は稀である。 そこで2018年度においては、細胞の機能を観察するより良い方法を中心に検討した。まず、培養する細胞をマウスのマクロファージとした。この理由は、細胞のサイズが比較的大きいこと、食作用の機能を有していること、さらに多少のバクテリアの培養液への混入(コンタミネーション)があってもそれらを貪食することで培養が継続できる可能性が期待できることからである。本研究では、マウスの腹腔内にチオグリコレート培地を注射し、その3日後に腹腔内から得られる細胞をマクロファージとして用いた。他のほとんど全ての細胞と同様に、マクロファージも無色透明な細胞なので、通常の光学顕微鏡でも観察できる物質を貪食させれば可視化できると考え、検討した。その結果、あるメーカーの蛍光色のポスターカラーを薄めて与えると、その主成分のエマルジョン粒子をマクロファージが4時間後には貪食することが観察できた。しかも、位相差顕微鏡のみならず、明視野観察、暗視野観察のほか、ブラックライトを励起光として用いることで蛍光による観察も可能であることがわかった。培養実験後に、常法により細胞を固定して細胞質や核の対比染色も行なうことで、光学顕微鏡で観察しやすい3色のプレパラートとすることも可能であった。 以上のように、低コストかつ省スペースの条件下で哺乳類細胞の培養が可能な方法ならびに食作用の新しい観察法を開発した。
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