研究課題/領域番号 |
16K01038
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
福井 智紀 麻布大学, 生命・環境科学部, 講師 (00367244)
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研究分担者 |
内田 隆 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (20782163)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学教育 / 理科教育 / 教員養成 / 教員研修 / STS教育 / 市民参加型手法 / 討論活動 / 科学技術社会論 |
研究実績の概要 |
本研究は、科学技術と社会との関わりの中で生じる諸課題に対する、児童・生徒の個人的意思決定とクラス内の合意形成を支援するために、理科教員に求められる資質・能力を明らかにし、その育成のための具体的な教員養成・研修プログラムを開発することを目的としている。 この目的を達成するため、本研究では、情報収集、開発準備、プログラム開発、試行・評価の4つの段階(フェーズ)で研究を進める計画となっている。 平成29年度までは、情報収集と開発準備の段階に含まれる研究作業に取り組んだうえで、プログラム開発および試行・評価の段階にまで、作業を進めた。まず、市民参加型テクノロジー・アセスメントの手法を活用した理科教材を開発し、理科教員免許取得を目指す教職課程の学生を対象に、試行と評価を行なった。このプログラムは、遺伝学の急速な進展にもとなう「デザイナー・ベビー」の誕生可能性に焦点を当て、フューチャーサーチの形式を応用したグループ討論によって、意思決定・合意形成を促すものである。さらに、過去に開発した同種のプログラムをベースにして、教員養成課程や現職教員研修での活用を念頭に置いた、学習指導のための研修プログラムを開発した。この研修プログラムでは、地球温暖化対策に焦点を当てた学習プログラムについて、授業で実際に活用するための予備知識や指導上の留意点を解説するとともに、シナリオ・ワークショップの形式を応用した生徒の討論活動の中で起こりえる指導上の課題について、指導者の立場で議論する活動を位置付けた。 この他、科学技術との付き合い方を考えるための討論活動について、環境教育・ESDを念頭に置きつつ理論的検討を行った。 以上を主とする研究作業の遂行により、科学技術に関する児童・生徒の意思決定と合意形成を支援する教員養成プログラムの開発について、中間段階での一定の成果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度までに進めてきた情報収集と開発準備の段階の研究作業を継続しつつ、さらにプログラム開発と試行・評価の段階にまで、研究作業を進展させることができた。これにより、プログラム・教材冊子の試行版が開発され、一定の活用効果も確認された。ただし、より優れた実用的な教員養成プログラムとするには、まだ改善や検討が必要である。また、補助的な研究作業に位置付けられるものも含めて、まだ遂行すべき研究作業が残っている。それでも、研究目的の達成を目指しつつ柔軟に研究作業を進めてきた結果、次年度における最終的な研究課題の達成について、一定の目途が立ったものと思われる。従って、本研究課題は現時点において、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究作業をさらに進めつつ、科学技術と社会との関わりの中で生じる諸課題について、新たなテーマに焦点を当てたプログラムを開発していく。また、児童・生徒の個人的意思決定とクラス内の合意形成を、どのように支援するかについて、欧米等で開発された市民参加型手法を手がかりに、さらに検討を進める。そして、これらのプログラムを活用するために必要な資質・能力を明確にしたうえで、その資質・能力を育成するための具体的な手法を体得できるよう、プログラムの開発および改善を計っていく。 以上を念頭に、最終年度となる次年度において研究課題を達成するために、補助的な研究作業も含め、計画的に複数の作業を並行して進めていく。また、より優れた実用的な教員養成プログラムとなるよう、他の研究者や学校教員の助言も可能な限り得るようにする。さらに、実際に広く活用されるよう、中間成果物の発信・普及にも積極的に取り組んでいく。
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次年度使用額が生じた理由 |
全般的には、おおむね順調に研究作業を遂行してきた。しかし、個々の具体的な研究作業については、当初の研究計画に対して、進捗状況や作業効率等の観点から、柔軟に作業順序や作業内容の一部を変更してきた。さらに、特に人件費・謝金については、この費目での支出を計画していた作業を専門業者に依頼したことで、他の費目となったものがある。 次年度においては、最終年度ということを念頭に、研究作業の遂行および研究課題の達成に必要な物品等について、計画的に使用していく。関連文献等についても、最終年度の成果の取りまとめにおいて活用するため、より積極的に収集していく。学会や研究会にも積極的に参加し、研究情報の収集や発信を行うことなどで、旅費を計画的に使用する。研究補助などに係る人件費・謝金や、その他の費目についても、研究の進展に応じて適切に使用していく。開発したプログラム等は、印刷・製本することで、試行・評価の段階において使用するとともに、研究成果物としての発信・普及に活用する。
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