研究課題/領域番号 |
16K01051
|
研究機関 | 群馬県衛生環境研究所 |
研究代表者 |
齊藤 由倫 群馬県衛生環境研究所, 大気環境係, 研究員 (30450373)
|
研究分担者 |
飯島 明宏 高崎経済大学, 地域政策学部, 准教授 (70391828)
佐野 和美 国立研究開発法人国立環境研究所, 資源循環・廃棄物研究センター, 特別研究員 (90571026)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地方環境研究所 / 環境教育 / 科学的データ / アンケート調査 / インタビュー調査 |
研究実績の概要 |
環境問題は時として風評被害に発展することがある。そのため、この問題を科学的データなどから冷静かつ客観的に捉えるための資質(科学リテラシー)を養う教育が求められている。本研究は、自然体験や感性教育などの導入教育が主体にとどまる現状の環境教育を、高次の学齢にも相応した科学リテラシー教育へと深化させることを目指すものである。地域の環境問題に科学的アプローチで取り組んでいる全国の地方環境研究所(以下、地環研という)に焦点をあて、これらの機関が環境問題に関する科学リテラシー教育の新たな教育リソースとなるかを検証する。 初年度はまず地環研の現状把握をするために、全国67の機関に対してアンケート調査を行った。これにより環境教育の実施状況(利用者、教育内容等)や環境教育を推進するための組織的な体制(担当者の有無、行政計画の有無等)、課題等を把握した。回答は66機関から得られ(回収率99%)、このうち47機関が環境教育を実施していると回答した。ただし、実施していないと回答したものの、その他の回答内容から実質的に環境教育を行っていると見なせた機関が4つあったため、計51機関、じつに8割弱が環境教育を行っていたことがわかった。その教育内容をみると、国内で広く行われている自然体験や生物観察のテーマが地環研では少ないのに対し、他ではほとんど扱われていない大気汚染のテーマが多く、また、少数ながらもリスクコミュニケーションや放射線に関するテーマがある点が特徴的であった。これらの特徴的な教育テーマは、科学的データを扱うものと考えられる。 環境教育の利用者数が多かった3つの地環研に対して、さらにインタビュー調査を行ったところ、高い利用実績は組織的な体制の充実に裏付けられていることが確認できた。他方、環境教育を実施していない地環研が共通の課題として挙げたものには、人員と予算の確保があった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画に沿って、全国規模のアンケート調査と個別のインタビュー調査を実施し、地方環境研究所の環境教育に関する実態把握とデータベースの作成ができたため。また、得られた研究成果の一端を日本環境教育学会の大会で発表することができ、これに対して研究奨励賞(競争倍率13%)を受賞したため。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度に把握した各地環研の環境教育の実施状況から、科学リテラシー教育として先進的な取り組みを抽出して詳細な事例解析を行い、併せて網羅的な文献調査も同時に行って科学リテラシー教育の教育理論を分析する。また、環境教育の普及にとって重要な教育効果の評価方法については、従来法である選択式のアンケート手法に加えて、教育学の分野では比較的新しいテキストマイニング分析を新たに加える。 科学リテラシー教育の理論に沿って試行的に環境教育を実践し、併せて教育効果の評価を行い、その結果をフィードバックして教育理論の普遍性を高めていく。 以上の研究成果から得られた知見を多くの地環研で共有するために、環境教育プラットフォーム(Webサイト)を立ち上げる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
アンケート結果を基にインタビュー調査の対象機関を選定したが、いずれの地環研も近郊の日帰り圏内であったことから当初予算額を下回ったため。また、代表研究者1名と研究協力者1名の計2名でインタビュー調査を行ったが、研究協力者の旅費については当初予定していなかった他の予算から支出することができたため。
|
次年度使用額の使用計画 |
各地環研における先進的な科学リテラシー教育の事例を詳細に調査するために、さらにいくつかの機関についてインタビュー調査を追加で実施する計画であり、この旅費として使用する。
|