研究課題/領域番号 |
16K01067
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡村 吉永 山口大学, 教育学部, 教授 (10204025)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 技術科的手法 / ものつくり / 教材・教具開発 / 創る / 学習支援 |
研究実績の概要 |
技術科の木材加工分野においては、子どもの加工ならびに工具使用経験の減少による作業ミスが、授業の進行を遅らせたり、学習者の意欲を減退させたりする要因として対策が求められている。これに対応するため、加工学習において習熟が必要であり、その後の作業に与える影響が大きいいけがき作業の改善を取り上げ、熟練が不足する学習者にも扱いやすい「けがき定規」を試作し、従来のさしがねや直角定規との扱いやすさを比較した。 けがき作業の主要作業である材料木端面に対する垂直線引きについて、実際の中学生で比較したところ、試作したけがき定規を用いた場合、作業上無視できる範囲の誤差である90°からの誤差が±0.2°未満の割合が67%で、誤差0.6°までを含めると全体の96%となった。直角定規とさしがねは、これに比べて誤差を生じやすく、直角定規では、誤差0.2°以内が約40%、さしがねでは誤差0.5°までを含めて約50%で、けがき定規の使用が有効と考えられる。さらに、木端面に妻手部が正しく当接したことがLEDやブザーで判別しやすくすることで、作業に支援が必要な学習者にも一層の効果が期待できる。こうした定規類や、これを前提とした学習題材についても開発を行い、小学校や特別支援学校での試行も行った。 また、技術科の学習内容を小学校にも広げ、さらに今後求められる創造性の育成を目指した研究として、小学校における「創る科」の新設を目指した提案を行った。創造立国を支える基盤となる資質能力の育成に技術科あるいは技術的思考の果たす役割は大きい。価値の創出と受容・評価を軸に、研究代表者が校長を務める附属小学校において、平成30年度から文部科学省の研究開発学校の指定を受けたことを機に、さらに、その考え方や実践の在り方を明らかにしていく計画である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
技術科的手法を用いた支援場面ならびに支援用教具の開発については、一定成果を上げることができ、その開発に必要な3Dプリンター等の利活用にも知見を蓄積することができた。研究のフィールドを小学校にも拡大できた一方、具体的な成果は得られておらず、今後の取り組みが求められる。 特別支援学校での取り組みについては、今年度後半に具体的な提案を行えたものの、研究としての取り組みには至っていない。全体としては、概ね順調であるが、特別支援学校での取り組みの遅れを重視し、やや遅れているとする。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年として、技術科的手法を小学校ならびに特別支援学校にどれだけ活用できるかをアピールするとともに、その有効性を学校教員等に理解してもらったうえで、どう教育指導に取り入れてもらえるかに重点を置きたい。3Dプリンターやレーザー加工機など、新たな加工ツールの出現により、加工に不慣れな教員でもデータさえあれば具体的な題材や教具、支援用具の製作が可能となってきたことを実例として示すとともに、そのニーズを掘り起こすことを目指したい。 令和元年度は、小学校で3Dプリンターを稼働させ、理科や総合的な学習の時間等で製作品や機械自体を教材化し、その効果や研究の方向性に関する知見を得たい。 また、技術科的手法を用いて、特別支援学校で半完成教材(キット教材)を製作し、これを一般小中学校で活用することについて具体化し、その成果を明らかにしたい。言葉による啓発活動に加え、技術科的アプローチによる具体的物での関わりを作ることは、特別支援学校と一般小中学校との相互理解を推進する効果が期待できると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
差額は26円と極少額であり、使用計画に影響は生じない。
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