研究課題/領域番号 |
16K01089
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
川浦 孝之 関西医科大学, 医学部, 助教 (90434828)
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研究分担者 |
北脇 知己 関西医科大学, 医学部, 教授 (40362959)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生物統計学 / 逆引き探索 / 学習支援システム / e-learning |
研究実績の概要 |
本研究課題では、臨床研究を行う際に必要な統計手法の選択を支援する臨床研究統計手法の逆引き探索・学習支援システムの構築を目的としている。 初年度にあたる平成28年度は臨床研究に適した統計手法を明確するために「生物統計学教育の調査」を計画し、次の3つの調査を実行した。1) 統計学教育の実態調査:現在の統計学教育の実態と、実際の臨床研究者がこれまでに受けてきた統計学教育の内容を把握するため、各大学のシラバスより「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいた教育が行われているかを調査した。2) 臨床研究に適した統計手法の精査:統計学教育の実態調査と出版されている臨床研究論文の調査より、臨床研究に適した統計手法の精査を行った。3) 臨床研究の現場の意見の集約:1)と2)では臨床研究の現場の意見を取り入れた調査を行ったが、それらの意見の集約とともに本学の臨床研究相談会に参加し、臨床研究の統計相談を受けることにより臨床研究を担う現場の医師の生物統計に関する要望調査を行った。 これらの調査の結果、医学部における統計学教育が臨床現場で必要とされる統計解析の知識に直結していないことが判明した。この現状を考慮し、構築システムには①生物統計学自己学習支援システム、②統計手法別臨床研究論文データベース、③統計ソフト例題検索データベース、の3コンテンツを搭載し、臨床研究を担う医師の支援を行う必要が明確になった。今後も引き続き、統計相談などを通じて情報収集を行い、臨床研究に適した統計手法の精査を続けて、具体的なシステム構築を行っていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度は臨床研究に適した統計手法を明確するために「生物統計学教育の調査」を計画し、次の3つの調査を実行した。いずれもおおむね順調に進展している。 1) 統計学教育の実態調査では、私立大学医学部のシラバスをWebより収集し、「医学教育モデル・コア・カリキュラム」に基づいた教育が行われているかを調査した。引き続き、平成29年度も国公立大学医学部の調査を行う予定である。2) 臨床研究に適した統計手法の精査」では、1)の統計学教育の実態調査と出版されている臨床研究論文の調査より、臨床研究に適した統計手法の精査を行った。3) 臨床研究の現場の意見の集約では、本学の臨床研究支援センターによる臨床研究相談会に参加し、臨床研究を担う現場の医師の実際に抱えているなど臨床研究についての疑問を集約することができた。また、統計相談を受け付け、生物統計に関する問題を集約した。臨床研究相談会への参加、及び、統計相談の受け付けは今後も続けて行い、システム構築に繋げる。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年に行った作業に基づき、臨床研究を担う医師側から統計手法を選択する仕組みである臨床研究統計手法の逆引き探索・自己学習支援システムの構築を行う。 システムの設計:臨床研究に適した統計手法の精査結果を、これまでの統計の専門家側からの視点の統計手法の選択から臨床研究を担う医師側からの視点の統計手法の選択に切り替えるため、前年度精査した臨床研究に適した統計手法より、臨床研究を担う医師側が統計手法を研究計画に適用しやすい形に設計する。設計に関しては臨床現場からの意見を柔軟に取り入れる。 搭載コンテンツの構築:①生物統計学自己学習支援システムの構築:平成28年に行った作業や臨床研究論文より厳選した生物統計学の統計手法を基本的な事柄から、臨床研究を担う医師が限られた時間の中で臨床研究に適した生物統計学を学習・復習できる仕組みを構築する。また、臨床実習などを行うことにより臨床研究を意識しながら統計学を学べると想定できる医学部学生の統計学教育の支援を考慮した構築の可能性も探る。②統計手法別臨床研究論文データベース:論文を検索する際は現在では全文検索を搭載している論文検索サイトがあり、目的の統計手法名を入力するとその統計手法が使用された論文に辿りつくことができるが、統計手法別一覧より論文を検索できるシステムがあればより臨床研究の支援ができると考えられる。仕組みとしては、各統計手法名の日本語と英語の一覧と別名がある場合に対応した統計手法名のシソーラスを作成し、統計手法名と臨床研究論文をリンクさせたデータベースを作成する。③統計ソフト例題検索データベース:臨床研究に使用する統計手法が確定しても、その分析をできなければ臨床研究を担う医師側を支援するシステムとは言い難い。そのために、幾つかの統計ソフトで必要な統計手法を用いた例題を提示するためのデータベースの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度の交付申請時点で計上していた物品費より物品を安く購入できたため未使用額が生じた。また、交付申請時点で旅費について国内学会調査旅費と打ち合わせ旅費計上していたが、旅費を使用しない調査などを中心に行ったため未使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
未使用額は、平成29年度に研究成果の公表のため国内旅費を計上しているが、その旅費と合わせて使用する計画である。
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