本研究課題は,「研究期間中に明らかにすること」として2点が設定された。すなわち(1)学習環境や学習者特性(校種、学力、文章産出の熟達度等)の要因が、産出された根拠の量や質、トレーニング後に生成される意見文内容に及ぼす影響を検討すること,(2)意見文作成授業(三宮 2007)を「基礎編」と「応用編」に2段階にわけ、各段階にトレーニングを配置することで、意見文生成過程と意見文の量や質に影響があるのかどうかを明らかにすること,であった。 平成31年度は,(1)について,大学生約100名を対象とした質問紙調査を通して,産出された根拠の量や質は,学力や文章産出の熟達度と関連していないことが示された。 次に(2)について,これまでに蓄積されてきた学習展開,主教材と副教材(トレーニング教材)をもとに作成されたワークブックを基に,大学生を対象としたプログラムが計画され,それぞれ10名を対象とする形で,計2回実施された。特に「根拠産出トレーニング」を経験することにより,生成される意見文の量が増えること(第1期平均325字→平均412.9字;第2期平均364字→平均574字),意見文の質(構成要素)が向上すること(第1期平均3.3ポイント→5.0ポイント;第2期平均3.5ポイント→5.0ポイント)が示された。ただ,第1期及び第2期の学習者による振り返りからは,「自発的に裏づけを考えることの難しさ」「裏づけの強さに対する判断の難しさ」などが指摘されており,さらなる介入の必要性が指摘された。
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