三重県の鈴鹿地域に残る伝統産業の着物生地染色のための型紙(伊勢型紙)加工にレーザー加工技術を導入し、そのプロセスをベースにした工学教育プログラムを構築してきた。特に本研究では、以前、3年間にわたり構築してきたプログラムをさら発展させ、型紙加工以外への当該技術の応用を、学生と地域企業との連携のもとに新しい製品開発に取り組むものづくり協働教育体制の構築を目指した。最終年度となる30年度の実施実績および成果としては以下のようになる。 1.29年度に実施したものと同じ授業形式で、正規のカリキュラムとして組み込まれている「創造工学」(4学年2単位)として教育プログラムを継続して実施した。計6名の学生が履修し、様々な製品開発に取り組んだ。 2.29年度に実施、構築した日本の伝統建造物を建築する業者からの提案で制作した木製日用品、特にスマートホンスタンドや木製音響スピーカに伊勢型紙特有の伝統和柄を刻印した製品開発を継続実施した。また地元業者からの提案と共同参画により、高級和菓子の桐箱の制作を企画し、実際の使用に耐えうるクオリティーのものにまで仕上げることを目指した。 3.新たな企業からの要請を受け、課題として追加取り組みを行った。具体的には、伊勢型紙と同様の地域の伝統産業である万古焼業界と連携した取り組みである。伊勢型紙のレーザー加工技術を応用し、皿や茶わんにデザインを刻み込む新しい技術の創出に取り組むものである。いくつかの試作品を製作するにまで至っている。 4.取り組み学生を対象に、教育プログラムとしての有効性に関するにアンケート調査を実施した。その結果、これまで地域の伝統産業としての伊勢型紙の認識が深まったこと、創造教育テーマとして魅力的であったことから楽しく取り組むことができたが、一方で新しい製品を開発する上でのデザインの難しさを改めて認識できたことなどが教育効果として明らかになった。
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