研究課題/領域番号 |
16K01102
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研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
細川 和仁 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (30335335)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 実践知 / 授業認知 / 教育実習 / 時間感覚 / 授業参観 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究としては,秋田大学教育文化学部附属小学校の協力を得ながら,継続的に授業参観を行い,可能な場面では映像記録や教師への聞き取り調査を行った。 教師の時間感覚に関する研究としては,日本教育心理学会第60回総会において,研究発表「教育実習生と実習指導教員の授業認知の比較:教師の待ちや時間感覚に着目して」を行った。この研究では,教育実習期間に指導担当の現職教師と教育実習生をペアとして,お互いの授業を参観し,その後授業における時間に関わることについて,気づいたことを自由に話していただく形でインタビューを行った。インタビューを行う際,それぞれが授業観察時にウェアラブルカメラで撮影した映像を刺激材料として用いた。各自の発言から見えてきたことは,ある場面において,指導教員と教育実習生の場面の捉え方,評価の仕方が異なる。これはある意味で当然生じることが予想されたが,正反対の捉え方をしている場合(例えば,テンポが早い/遅い,など)もあった。さらに,現職教師の授業の捉え方については,その全てを実習の中で実習生に伝えることは難しく,実習生の立場からは,指導教員の授業の捉え方そのものが,非常に示唆に富むことがわかった。 また,複数の教員への聞き取りを基に,時間をキーにした「授業記録ノートPAD」を開発した。このPADは,授業観察の視点を授業記録時に意識化することを目指し,必要な要素を盛り込んだものである。具体的には,授業における経過時間を意識できるようにするとともに,授業観察時の視点をあらかじめ明記させるような形式を採っている。このノートPADを利用することで,授業観察の際にどのような見えの変化が生じるか,について,今後データを収集していきたいと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までの進捗状況は,昨年度に引き続き「やや遅れている」と言わざるを得ない。当初計画していた研究方法は,教育現場における実践のデータ収集が必須であり,また教師や教育実習生に対する聞き取り調査は多くの場合,長い時間を必要とすることが多く,昨今の学校現場における勤務の状況から,負担を強いることはできる限り避ける必要がある。参加した学会では,本研究と同様に,附属学校や実習生を対象とする研究を行っている研究者からアドバイスをもらうことができ,可能な範囲でデータ収集を行う今後の方向を定めることができた。既にとった映像・音声データをもとにした分析は今後可能であるので,丁寧な分析を通じた研究のまとめを今後行っていきたい。 また,データ収集の難しさと関わって,調査対象が近隣の小学校が主となったため,出張旅費の使用額は当初よりかなり少なくなっている。 上記のような進捗状況から,当初2018年度が最終年度であったが,延長申請を行い,受理していただいたので,1年間研究期間を延長して従事することとした。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間の1年延長を認めていただいたので,当初の研究目的に立ち返り,必要なデータ収集と分析を行う。当初の研究課題として,授業における教師の待機行動がいかに生起するか,またそのことと教師の省察がどのような関係を持っているか,さらには,待機行動を,教師の実践知の一つと位置づけたとき,それがどのように獲得され,また更新されていくのかを挙げていた。これらのうち,省察が教師の行動にいかなる影響を及ぼすかという点に,特に着目することとしたい。そのことは,若手教師や教育実習生のような立場の者が,経験教師からいかにして学ぶか,という点を明らかにすることにもつながる。 このことを明らかにしていくため,「総合的な学習の時間」(総合学習)を手がかりにしたい。総合学習では,子どもが自ら考え,自ら課題を定め探究していく活動が位置づけられるため,そのような学習を行う際,思考する時間を確保する等の待機行動が見られると考えられる。そのような視点から,実践知の獲得について整理していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度から,次年度に繰り越す研究費が累積しており,今年度も次年度使用額が発生している。そのことも,研究期間延長を申請した要因の一つとなっているが,当初計画に比べて,「旅費」及び「人件費・謝金」において残額が多く発生している。今年度,必要最小限の旅費として,研究発表を行う学会等への出張,他の地域において先進的な校内研究を実践している学校への訪問に使用させていただく。また「人件費・謝金」は,収集した必要なデータの入力,処理等に使用し,無理な使用が生じないように強く留意する。
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