当初予定していた3カ年の研究計画を延長し,本年度まで研究を実施した。研究を通じて,授業中において待っている状態の多様性を明らかにすることはできたものの,教職経験年数による違いなどを明らかにするには至らなかった。 本年度の研究の中では,小学校における総合的な学習の時間の指導における教授行動に着目した(細川,2020)。総合的な学習の時間はそのねらいとして,探究的な見方を身に付けることが示され,子どもたちがそれぞれ学習方法を選び,探究していく過程が重要視される。その中で,児童らが学習方法,探究方法を選択する場面において,教師がどのような働きかけをするかに着目した。その場面において,教師が指示をするのではなく,児童が自ら選ぶのを待つことが重要であるという,教師自身の認識を引き出すことができた。 このことは,観察者から見れば何も行われていないように見える状況において,授業者が子どもの学習に対して自律的な学習の生起を期待し,それを待機するという,教師として難しい判断が迫られる場面であることをあらためて認識できた。今後は,授業のごく限られた場面に限定したミクロな研究と,単元レベルでの授業計画のような多いなレベルの研究とを併用させなければならないことを認識した。 また,教師の判断や思考を明らかにしていくために,映像や音声をデータとして収集し,インタビューを通じたリフレクションを行うなかで,映像や音声に記録されていないことについて教師が思考していることが多様にあることを再認識することとなった。例えば,板書をしながら,子どものつぶやきを耳で聞いていたり,グループワークの机間指導をしながら,遠く離れたグループの活動状況を把握しようとしたり,といった思考をしている。こういった思考過程の想起を促すのに,360度カメラ等の機器を使うことの有効性もあり,今後の検討課題となった。
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