研究課題/領域番号 |
16K01105
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
刑部 育子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (20306450)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メディアの活用 / 保育 / ビデオ / 可視化 / 暗黙知 |
研究実績の概要 |
本研究は申請者がこれまでに開発、製品化し、一般の普及にも努めてきたビデオツールCAVSceneを活用することで、保育者の専門性に深く関わる暗黙知の可視化、及びビデオカンファレンスにおけるビデオ記録の共有によって専門的な知がどのように集合的に生成されるか、そのプロセスを解明することを目的としている。そのため、(1)専門家の省察や知の生成に関わる先駆的な研究についての調査、(2)ビデオデータを活用した保育者の暗黙知の分析と可視化、(3)ビデオ記録の共有による集合的知の形成のプロセスの分析を行い、(4)その成果を基に保育者の専門性の向上のためのプログラム開発を行い、国内外に広くその成果を発信することとしている。 以上の目的のもと、平成29年度は本研究期間(3年間)の2年目であり、当初の計画通りにおおむね順調に進んだ。(1)専門家の省察や知の生成に関わる先駆的な研究については、すでに前年度より海外の研究も含め調査を行っているが、ビデオを通した専門家の省察や知の生成に関わる先駆的な研究については見当たらず、本研究の独自性ゆえと考えられるが、今後もこの点については注意深く動向を押えておく必要があると考えている。(2)については、ビデオ分析から実践者の暗黙知が可視化される振り返りの探索の仕方に新しい発見があった。詳細な分析と成果発表は今後進めることとする。(3)については、記録の共有による集合的知の形成のプロセスに携わり、(4)の専門研修プログラムに活かした。とくにこの研修では、写真や映像を含めたドキュメンテーション化を保育者の専門研修の一環として位置づけており、本研究の知見が活かされた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の具体的な進捗状況として、(1)専門家の省察や知の生成に関わる先駆的な研究については、世界幼児教育・保育機構OMEP世界大会、およびヨーロッパ幼児教育学会EECERA大会へ参加し、動向を調査するとともに発表を行った。また、発表会場となった国(クロアチア)の幼稚園も訪問し、専門研修の様子や省察に関わるドキュメンテーションを視察した。さらに、日本の幼児教育システムを導入し、現在では日本よりも少子化国であり、日本よりも早く幼保一元化を実現した台湾を訪問した。台湾の幼児教育の第一人者の国立台北教育大学の教授より、現在、改訂が進められている幼児園基礎評鑑指標説明書(日本で言えば幼稚園教育要領解説書にあたる)の説明、その最新の専門的知識の現場への伝え方・共有方法、保育カンファレンス(集合的知の形成プロセス)の実際を、教授の地方への巡回指導に同伴することで見ることができた。(2)ビデオデータを活用した保育者の暗黙知の分析と可視化についての本年度の新たな発見は、映像に全く言語的メモを付け加えなくても、ビデオの「気になる場面」を瞬時に振り返る教師の暗黙知が見いだされたことである。このことは、これまでの研究の結果に新たな知見を加えるものである。(3)(4)については、(3)ビデオ記録の共有による集合的知の形成のプロセスに関わることと、(4)専門研修プログラムの開発を同時に進め、複数の幼稚園と認定こども園の保育者が、それぞれグループ(5名ずつ)を組み、探究する「保育を伝える・保育が伝わる」と題した研修(20名参加)に関わった。この研修では、ワークショップ型の当事者中心の専門研修プログラムを目指した。その成果として、研修に関わった20名の保育者自身がそれぞれ効果的な写真や映像資料を用いてプレゼンテーションを準備し、最終的には300名近い保育者の前で発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
(1)専門家の省察や知の生成に関わる先駆的な研究について、調査について進めているが、ビデオを活用した専門家の省察や知の生成に関わる先駆的な学術研究については見当たらないことから、この調査は継続することとし、今後もこの点についての動向は押えていくこととする。 (2)ビデオデータを活用した保育者の暗黙知の分析と可視化については、平成29年度に引き続き、詳細な分析を進め、その成果を発表する。 (3)ビデオ記録の共有による集合的知の形成のプロセスの分析については、平成29年度に引き続き、分析を進め、その成果を発表する。 (4)保育者の専門性の向上のためのプログラム開発については、平成29年度の研修プログラムの結果を活かし、本年度はさらなるワークショップ型の当事者中心の専門研修プログラムの開発を展開させ、その成果を発信する。
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