研究課題/領域番号 |
16K01111
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
小柳 和喜雄 奈良教育大学, 教育学研究科, 教授 (00225591)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小中一貫教育 / 教員のアイデンティティ / 教師教育者のアイデンティティ / 教員の専門的能力 / 管理職の役割 / 教員のリーダーシップ / 研究主任の役割 / 教員研修プログラム開発 |
研究実績の概要 |
平成28年度は「小中学校教員のアイデンティティの明確化」「小中学校教員の専門的能力の明確化」「小中一貫教育推進校のリーダーの特性の明確化」の課題に焦点化して研究を進めた. まず「小中学校教員のアイデンティティの明確化」に関しては,教員のアイデンティティに関する国内の調査研究,教師教育者のアイデンティティに関する国内の調査研究のレビューを行った.また教員のアイデンティティに関する国際的な研究の動向の情報収集を行うためにヨーロッパ教育学会2016(アイルランドで8月に開催)に参加し,教員のアイデンティティに関する国内外の研究動向の整理を行った. 続いて「小中学校教員の専門的能力の明確化」に関しては,教員の資質能力に関するスタンダード研究(米国のedTPA等)と初等中等教育段階にある子供に培いたい力,コンピテンシーに関する研究,及びその力を測る方法やその結果分析に関する研究成果(豪州の研究,学力調査に関する研究等)を比較検討し,子どもたちに期待されている力を育成することに対して求められる教員の専門的能力に関する多様な能力モデル,能力項目や指標を明らかにした.その成果は3つの論文にまとめることができた. また「小中一貫教育推進校のリーダーの特性の明確化」に関しては,先行的に小中一貫教育に取り組んできた4市の協力を得て,効果的な取組をしている学校(立地・規模などの調査全体のバランスも考慮しながら,各市2校を選定)への取材とリーダーの特性の明確化に向けた分析検討を行った.管理職を含む校内リーダーが意識的に取り組んでいる事例を1年を通じて取収し,そこで行われている取組のパターンの整理を行った.その成果は1つ論文にまとめることができた. 上記3つの研究成果を通して,平成29年度に行う,「小中学校教員のアイデンティティおよび専門的能力」の質問紙の開発の基礎情報を収集整理をすることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は,義務教育学校の制度化と関わって,「小中一貫教育で成果を上げている小中学校教員のアイデンティティと専門的能力を明確にし,各学校での研修,自治体主催の研修,及び教職大学院等で有効活用できるツール群」をデザインし,その開発及び運用評価をすることを目的としている. 平成28年度は,平成29年度に実施予定の「小中学校教員のアイデンティティおよび専門的能力」に関する質問紙調査について基礎情報の収集整理と共に,予備調査を終えることができ,質問紙の枠組みを考える因子構造も明らかにすることができている.その成果は,ある学会の学会誌に現在投稿中である. また,養成と研修を通じて,教員志望学生と現職教員が,小中一貫教育を意識化できるために,どのようなプログラムが求められるかに関して以下の研究も進めることができた. 小柳和喜雄(2017)バリエーション理論を用いた養成プログラムの開発研究.日本教育大学協会研究年報 第35集 89-101.小柳和喜雄(2017)養成と研修の内容・方法の連続性と非連続性に関する関係考察.奈良教育大学 教職大学院研究紀要 学校教育実践研究 第9号 1-10. 小柳和喜雄(2017)教職大学院における教員のためのICT活用指導力の育成プログラムの開発研究.奈良教育大学 次世代教員養成センター研究紀要 第3号 11-21. 以上のことから当初計画以上に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,まず「小中一貫教育推進校と推進をしていない学校の比較質問紙調査」を実施するために,平成28年度に「小中学校教員のアイデンティティおよび専門的能力」に関して開発した質問紙を用い,小中一貫の推進をしている先の4市とは異なるA市の教育委員会と教員の協力を得て,調査と分析を行う.その結果をどのように解釈するか,本調査に向けて欠けている点はないかについての検討を行う. 次に「小中一貫教育推進校で成果を上げている学校と困難を感じている学校の事例調査」と「小中一貫教育を推進している教育委員会の研修等の取組事例調査」を行う.これに関わって,前年度に協力を得た4市の協力を得て調査を行う.なお「困難を感じている学校の事例調査」に関しては,取り組んでいるがなかなか成果が上がらなく悩んでいる学校を意味しており,成功していない学校という意味ではない.本調査では,そのコンサルティングも目指し了承を得て調査に入り,学校への貢献も意識して取り組むものである.上記の調査を通して,小中一貫教育は学校の文化差が課題と言われるが,それは本当か,などを小中学校教員のアイデンティティや専門的能力の比較研究を行う.小中一貫推進校とそうではない学校で調査をする中で,成功している学校等の教員の特徴を明らかにする.また積極的に小中一貫教育を推進してきた教育委員会の研修プログラムの特徴を明らかにする. また平成30年度に開発を目指す研修プログラムと関わって,小中一貫教育で目指す子供の力の育成及びそれに向けての教員の指導力に関する情報をさらに豊かにしておく必要がある.そのための情報収集を国内外の学会に参加し,情報を収集する.
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