研究課題/領域番号 |
16K01111
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研究機関 | 奈良教育大学 |
研究代表者 |
小柳 和喜雄 奈良教育大学, 教職開発講座, 教授 (00225591)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小中一貫 / 小中連携 / 義務教育学校 / 教員のアイデンティティ / 教員の専門的能力 / 研修評価方法 / Teacher Leadership / Professional Capital |
研究実績の概要 |
平成29年度は,小中連携や一貫教育に取り組んでいる学校に対して,「小中教員のアイデンティティおよび専門的能力」を測る質問紙調査を通して,学校によってどのような傾向があるか分析を行った。また「小中一貫教育推進校で成果を上げている学校と困難を感じている学校」と「小中一貫教育を推進している教育委員会の研修」等の事例調査を行い,成果を上げている学校や成果を上げている委員会の研修には,どのような違いや特徴があるかを明らかにするように努めた. まず「小中教員のアイデンティティおよび専門的能力」に関しては,立地・規模・取り組んでからの年数ごとにどのような傾向があるか複数の地域の学校から協力を得て調査を行った.結果として,1)小中一貫教育を進める中で,授業への自信や満足感を感じていないのは,女性教員の方が多く,また小学校籍の教員にその傾向が見られること,2)教職アイデンティティにあいまいさや混乱を感じているのは,消極的な中学校籍の教員とむしろ積極的な女性教員 であること,これは「職場の雰囲気」「同僚との関係」に問題を感じ,「学校改善」にも消極的である姿と関係があることが,明らかになった.その成果は論文にまとめることができた. そして「小中一貫教育推進校で成果を上げている学校と困難を感じている学校」と「小中一貫教育を推進している教育委員会の研修」に関しては,管理職や研究主任のリーダーシップだけでなく,教員一人一人のリーダーシップへどのように目を向けそれを引き出していくかが重要であること,そのためにはどのような取り組みが必要で,どのような調査方法が有効かを明らかにした.その成果を論文にまとめることができた. また,養成と研修を通じて,教員志望学生と現職教員が,小中一貫教育を意識化できるために,どのようなプログラムが求められるかに関しても,その成果を論文にまとめることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の最終ゴールである「各学校での研修,自治体主催の研修,及び教職大学院等で有効活用できるツール群の開発」に向けて,必要となる「小中一貫教育で成果を上げている小中学校教員のアイデンティティと専門的能力」を調査を通じて明確にすることができていること.また「小中一貫教育推進校で成果を上げている学校と困難を感じている学校」の運営上の特徴,及び「小中一貫教育を推進している教育委員会の悩みどころ」「求めている研修内容」の傾向などを事例収集調査から明確にすることができていること. 以上の点から平成29年度までに行うべく計画していた内容は達成できている. さらに平成30年度の計画内容である「各学校での研修,自治体主催の研修,及び教職大学院等で有効活用できるツール群の開発」に向けて,素材の収集,その編集作業はほぼ終わりつつあるため.
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今後の研究の推進方策 |
本研究は,義務教育学校の制度化と関わって,「小中一貫教育で成果を上げている小中学校教員のアイデンティティと専門的能力を明確にし,各学校での研修,自治体主催の研修,及び教職大学院等で有効活用できるツール群」をデザインし,その開発及び運用評価をすることを目的としている. 最終年度である平成30年度は,平成28年度と29年度の研究成果をもとに,立地・規模・環境に応じた小中一貫教育の取り組み事例,マネジメントの方法事例,評価の方法事例などを掲載した「研修・養成支援ツールの開発」(「小中教員のチーム力,組織的教育力を発揮するための研修ハンドブック開発(現職研修用と教員養成用)」)とその「ツールの運用評価」を行う. また義務教育学校の設置に向けて取り組んでいる自治体や学校を支援するための,関連情報をWWWサイト上に掲載する. ツールの評価に関しては、小中一貫教育を積極的に進めてきた奈良市また取り組みを始めた八尾市,および他の教育センターから評価を得て、改良を行う.また教職大学院でも運用評価を進め,改良を進める. なお成果を国内外で公表し,他の取組や研究との交流を深める.
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