研究課題/領域番号 |
16K01113
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
永松 利文 鳥取大学, 教育支援・国際交流推進機構, 教授 (30300198)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 欧州経済 / 高等教育 / 経営系人材 / 欧州事情 |
研究実績の概要 |
本年度においては、主に平成28年度に実施した欧州経済に関する資料調査や欧州(ドイツ)での調査の分析を実施した。これらの調査においては、本研究にかかわる今後の欧州の経済動向を把握するとともに、これに適合する高度人材及び本研究が課題とする同高等教育モデルの解明につながるものである。 当初の想定通り、欧州圏においては、経済格差が想像以上に大きく、南欧と独仏を中心とする欧州圏の格差はとくに厳しい。また、北欧圏においては、農業国であったフィンランドが中核産業をIT産業へのシフトに成功したように、産業の振興とこれを基盤とした安定的財政基盤による社会の豊かさが顕著になっている。 これは、本年度におけるスクリーニング調査分析により明らかになった。このように欧州経済の課題及び欧州を含む世界経済の変動により高等教育課程、とくに本研究が対象とする経営系高度専門職業人育成においては、大きな変革の必要性が明らかとなった。また、研究計画では想定していなかったが、今後の経済動向への波及及び経営系高度専門職業人育成にあたっては、AIのような新たな科学技術の影響も検討する必要がある点も確認できた。今後の研究推進にあたって、この点は深く考慮する必要があると思われ、研究計画に取り入れる予定である。 本年度の研究推進においては、28年度に引き続き欧米圏での調査を予定していたが、相手側大学等との訪問日程が合わず、これらの海外調査は平成30年度に持ち越すこととした。現在、調査先を選定中で、平成30年度早々に日程や調査内容等の決定を行う予定としている。本研究は、冒頭述べたように、世界経済の動向や科学技術の影響が外部要因として大きいため、これらの状況については、引き続き調査分析を行うとともに、本研究を通じて蓄積している各種資料やデータを有効に活用し、調査分析を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、とくに経済指標やマクロ経済いわゆる経済政策に係るデータや資料が必要であり、現在、国内の調査(欧州に関連する研究機関や大学、企業)を通して、過去及び将来予想に効果をもたらすパネルデータを順調に収集できた。これらは、徐々に分析を進めており、これにもとづき、本研究が対象とする経営系高度人材育成にあたってのコア教育領域の策定に大きく前進している。これに共通するキーワードとしては、異文化理解を含む国際性、IT、会計、数学統計等であり、現在は、まだ研究途上ではあるが、具体的な教育内容について、研究終了までには構築できる目途が立ちつつある。 海外調査については、自身の日程や都合及び調査対象の日程、都合が合致しなかったため、平成30年度に持ち越しとしたが、その代わり、国内における各種資料収集が順調に進行し、予想以上のパネルデータを収集することができたとともに、調査活動を通じ、本研究分野に関する人脈や施設利用など、今後、本研究を継続する上で、非常に有効な国内調査活動となった。近年、国際化は地方都市にも波及しており、本研究の対象地域と日本の地方都市が直接的に商取引や人材交流を拡張していることもあって、国内調査を通じ、海外との人脈開拓など大きなメリットが得られた。 データ分析については、近年、データベースの設計などが比較的容易になっているため、研究当初は、高度なITスキルを持つ大学院生を雇用する予定であったが、現在、自営でデータベース構築にあたっており、今後、必要に応じては、高度なスキルを有する人材の雇用も検討する予定である。そのほか大幅な研究計画の変更はなく、基本的に、調査→蓄積→分析という流れのなかで、研究を深めていく計画であり、経済動向の変容については、常にアップデートを怠らないようにし、計画の修正を行うこととしている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、引き続き、欧州社会経済及び国際社会経済動向予測を行うとともに、これに対応する欧州高等教育圏の専門職遠隔教育課程教育カリキュラムの研究に着手する予定である。海外調査を実施し、教育との関係/企業と学生効用認識を調査する。計画では、4カ国の調査を掲げているが、期間や費用等で不可能な場合、縮小又は代替国に変更する。 平成31年度においては、これまで蓄積・構築したデータベースを本格的に解析し、調査資料やパネルデータを抽出し、本研究に効果的なデータを選定する。これらの経済系のデータ系の分析と合わせて、欧州高等教育圏における遠隔教育の制度の位置づけと実質的効用認識の分析も予定している。これは、今後の経済動向や科学技術動向も加味する必要があり、大規模な分析となる。さらに、研究結果を精緻化するために、段階的に 研究結果のレビューも実施し、関連分野の専門家等に研究評価等を依頼することとしている。とくに、研究レビューは、欧州又は米国の専門家・機関を予定しているが、期間及び費用の点で不可能な場合、国内大学又は学会で実施する。 また可能であれば、海外での研究レビューは、海外調査と同時に実施することが費用等の問題で有効なため、できるだけ効率化に努める。平成32年度には、さらに研究結果のレビューを進め、国際的企業等の人材戦略や国際動向等との融合性を前提とする欧州高等教育圏における専門職遠隔教育への含意構築に努める。現段階においても、これらの青写真が徐々にできつつあるものの、科学技術発展や経済動向の変動も予想され、この青写真も修正の可能性も想定され、そのため研究結果のレビューを様々な分野の専門家に依頼することにしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本報告書で記しているが、研究計画において、海外調査を実施できなかったため、次年度使用額が生じた。理由もすでに記したように、当方の日程と都合及び訪問相手先の日程等が合わず、来年度に実施することとした。全体の研究計画のなかで、海外調査の一年先延ばしは支障とならないため、次年度使用としたい。
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