研究課題/領域番号 |
16K01115
|
研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
金西 計英 徳島大学, 総合教育センター, 教授 (80204577)
|
研究分担者 |
戸川 聡 四国大学, 情報処理教育センター, 教授 (20399166)
高橋 暁子 徳島大学, 総合教育センター, 特任准教授 (20648969)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 反転授業 / ブレンド型授業 / e-ラーニング / 深い学習 / アクティブラーニング / 21世紀型スキル |
研究実績の概要 |
2010年以降、北米から始まった反転授業に注目が集まっている。e-ラーニングの分類では、反転授業は対面授業とオンライン学習を組み合わせたブレンド型と呼ばれる学習形態である。一方で、反転授業はアクティブラーニングの一種としても受け入れられている。反転授業の普及が進む中、授業を実施する教員は、一定の効果を直観してきたが、学習効果の詳細は明らかになっていない。アクティブラーニングの研究において、学習に対する理解が進み、学習を、浅い学習と深い学習に分けて考えるようになった。反転授業の研究においても、浅い学習と深い学習に対し、学習効果の検証をを模索することが顕著になっている。しかし、反転授業は、ブレンド型の授業であるにも関わらず、e-ラーニングの影響等を考慮した学習効果の研究は進んでいない。e-ラーニングのデザインが学習へどのように影響を与えているのかを明らかにすることは、今後の授業設計にとって重要である。 本研究では、高等教育等の現場へ還元を目指し、反転授業の学習効果の検証や分析をおこない、汎用的な反転授業のデザインを構築することを目指している。 本研究では、まず、研究協力者を募り、反転授業の実践事例の収集と、分析を目指した。結果として複数の実践事例に対する調査をおこなうことが出来た。質問紙の調査を中心にデータを収集した。1年目は、浅い学習と呼ばれる、知識の伝達に関する学習効果が得られることが分かった。2年目は、深い学習について効果が示唆されることが分かった。深い学習はメタ認知と呼ばれる活動の反映であると考えるに至った。そのため、深い学習の検証について、手法の検討が必要であることも明らかになった。3年目は検証方法を検討し、メタ認知と深い学習の関係を明らかにする。あわせて、ブレンド型授業としての反転授業のデザインについても検討する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、e-ラーニングの研究という観点と、高等教育の実践研究の観点から、反転授業の高度化を目指すものである。具体的には 、反転授業の学習効果の検証と、反転授業のデザイン方法を提案することを目指す。 研究の初年次である平成28年度は、研究協力者を募り、反転授業の実践事例を集めた。アンケートを中心にデータを収集し、分析をおこなった。調査から、浅い学習と呼ばれる知識の伝達に関する学習について、反転授業は一定の効果が得られることが分かった。平成29年度も前年度に続き実践事例を募り、調査をおこなった。調査の結果から、深い学びについて、その効果が示唆されることが分かった。明確な指標を得るところまではいたらなかった。そこで、調査の方法を検討した結果、メタ認知の分析の手法を用いることとした。深い学びは、メタなレベルの認知と考えられる。直接、メタレベルの認知活動を測定することは困難であることが分かった。 研究の成果については、内外の関連する学会等で発表をおこなった。例えば、京都大学高等教育研究開発センター主催の第24回大学教育研究フォーラム(2018年3月開催)において、企画セッションを開き内外の研究者らと議論を深めた。当該セッションでは指定討論者に大阪大学の三宮真智子教授を招き、アクティブラーニングにおける深い学びについて討論した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30 年度は、引き続き、深い学びの実態調査に取り組む。これまでの成果を踏まえメタ認知の観点から、反転授業の調査をおこなう。質問紙調査を中心にデータを集め、分析を進める。質問紙の内容について検討をおこなっており、改良を進める。改良した質問紙による調査を試行する予定である。その上で、反転授業における、深い学びの存在について検討を進める。これまでの研究で、深い学びの存在は示唆されており、より実態へ迫ることを目指す。 その上で、反転授業の授業デザインを検討する。反転授業の実施環境についての検討、コンテンツの開発の検討、授業実施の検討を進める。反転受業の普及を目指す場合、教員にとって実践の経験を共有する場の形成が必要と考える。例えば、コンテンツを何らかの形で、教員間で共用することができれば、コンテンツ作成のコストは軽減される。共有のためにどのようにすれば共有が促進されるかの検討をおこなう。 平成30年度は、最終年度であり研究の総括をおこなう。研究の成果を、内外の学会等で公開することを目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究調査や成果公開のための学会等への参加において、各種の調整を進める中、予定の修正が必要となり、旅費の支出が予定通りではなかったことによる。次年度は、研究成果の公開を含め、内外への調査等の活動を予定している。
|