本研究の骨子は伝統工芸陶磁器絵付け技能支援のため、4K高精細立体視動画と筆圧制御高精細画素タブレット、MR用HMDを用いた技能学習支援教材を開発することで、職人希望者に対し文様や絵柄の模写再現技能修得の期間短縮を目指すことである。 最終年度は教材のサンプルモデル作成を行った。陶磁器絵付け職人の立体物描画作業を4K高精細動画及び加速度センサや三次元入力デバイスを持つデータグローブにより記録する基礎技術開発を行った。有田焼の高度な上絵付け技法の描画工程は、指先の動きや運筆など繊細で緻密な記録データとなる。そのため、職人の頭部や胸部、手首に小型4Kカメラや加速センサを装着してもらう。加えて作業全体を俯瞰するカメラや固定カメラも準備しておくこととした。 また、昨年度に続き、壺や大皿等、立体物への描画作業時はMR環境用として3次元上の高解像度描画装置の実装を目標に技術調査を行った。これらは高精細の動画と連動する職人の運筆データの視覚及び触覚アーカイブスとしても重要な知見となる。 熟達者が行う陶磁器の絵付け作業は、日本画の技法が基礎となっており、絵の具は顔料と水と膠を用いる。ただ、紙ではなく一度焼成した陶磁器のガラス質表面であり、曲面の場合は筆に含ませる絵の具の量や筆圧の加減が重要となる。高解像度の動画ではそのような微妙な描画状況を逃すことなく記録することが必要であり、伝統工芸の技術アーカイブスとしても貴重なコンテンツと成ると考えた。 以上の研究成果や知見を社会に還元するために、2018年10月に芸術表現、医療とMR等先端テクノロジーによる課題解決に関してセミナーやシンポジウムを行った。
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