研究課題/領域番号 |
16K01119
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
丹羽 量久 長崎大学, ICT基盤センター, 教授 (90448499)
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研究分担者 |
山地 弘起 独立行政法人大学入試センター, 独立行政法人大学入試センター, 教授 (10220360)
二木 映子 宇部工業高等専門学校, 経営情報学科, 講師 (20290794)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メタ認知 / 高等教育 / 情報教育 / 表計算 |
研究実績の概要 |
長崎大学の平成27年度初年次学生226名を対象とした,成人用尺度28項目の自己評価によるメタ認知測定データがある。これらについて,三つの構成概念(メタ認知的知識,メタ認知的モニタリング,メタ認知的コントロール)に着目して因子分析を再度実施して3因子を抽出した。ただし,抽出された因子が本来の三つの構成概念と十分対応していないことがわかった。次に,測定内容の明確化と回答負担の軽減を目指して,3因子15項目の短縮版を作成し,短縮版によるメタ認知得点と情報系教養科目の学修成果との関係を調べたところ,両者に相関がみられなかった。これらより,尺度を精錬する必要性があるという課題が明らかになった。 長崎大学の平成28年度初年次学生を対象として,4月と8月に上記と同じ方法でメタ認知を測定し,両測定値の差について調べた。28項目の合計点の平均値間に有意な差が認められ,さらに項目ごとに調べたところ,10項目において有意な差が認められた。調査を実施した科目で取り組ませている授業の振り返りや8月測定時に報告させた「変化の自覚」と併せて考察すると,大学生活全体が影響していることは否めないものの,授業での課題がメタ認知の伸長に寄与している可能性があることがわかった。 Office Open XMLのSpreadsheetML 仕様に対応するためのプログラム仕様を設計し,Excel形式ファイルを対象とした正誤判定機能と判定結果の集計機能を有するPHPプログラムを開発した。長崎大学と宇部工業高等専門学校における学生の表計算演習結果をバッチ処理する環境を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成28年度の研究実施計画については以下の通りである。 「(1) メタ認知特性と学習パターンの関連性の分析」については,担当科目において蓄積した学習記録から学習パターンの検討を行ったが,類型化には至っていない。既存のメタ認知測定データの再分析を行って,メタ認知得点と学修成果との関連性を検討したが,両者に相関がみられなかった。質問紙によるメタ認知の測定は,学習成績との間で弱いながらも相関があることが示唆されているため,まったく相関がみられなかったという結果は尺度の妥当性を問い直す必要があるともいえる。一方,平成28年度の初年次学生を対象として,既存データと同じ方法で成人用尺度28項目によるメタ認知の測定を4月と8月の二回に渡って実施し,一部の項目については両者の差異が有意であることを確認した。 「(2) ニューラルネットワークの構造設計と構築」については,ニューラルネットワークの入力パラメータとして想定している尺度を精錬する必要性が出てきたことから,未着手としている。 「(3) 表計算に関わる演習結果の評価基準と助言の検討」については,長崎大学と宇部工業高等専門学校の授業で取り上げている範囲において,Office Open XMLのSpreadsheetMLの分析を終えただけでなく,プログラムの仕様検討および完成させた。このプログラムをバッチ形式で利用する環境を整え,演習結果ファイルの自動採点・集計が可能となった。一方,解答履歴の分析については,長崎大学と宇部工業高等専門学校それぞれの回答パターンの分類等が完了していない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において重要な位置づけとなっているメタ認知について,その尺度を精錬する必要性が出てきたことから,引用利用している現尺度28項目の原本52項目(Schraw, G., & Dennison, D.(1994))の和訳に検討を加えることを最重要課題とする。早い時期に尺度を見直して,メタ認知測定を実施し,見直した尺度について考察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
データ分析補助としての人件費支出を予定していたが,別途雇用する必要がなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
関連ソフトウェアおよび関連資料の整備に充てる予定である。
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