研究実績の概要 |
2017年度に取り組んだMetacognitive Awareness Inventory(Schraw& Dennison, 1994)の邦訳にあたっては,その解釈に十分注意を払って熟慮を重ねたが,原項目の意図が不明瞭であったために,MAI仮訳版には腑に落ちない日本語表現を採用せざるを得ない項目がいくつか残っていた.日本の学生の学習観や学習習慣は欧米とは異なるため,MAI原著者Sperling氏(旧姓:Dennison)に原項目設定の意図を確認するとともに日本語表現として許容される範囲を探った.Sperling氏から得られた助言を反映させることにより邦訳確度を向上させ,さらにしっくりくるような日本語表現となるように努めて,計11項目の設問表現を見直した.一方,MAI仮訳版による測定データの分析結果から,下位尺度「条件の知識」と「修正の方略」のメタ認知項目が不足すると考えられたので,両下位尺度にそれぞれ3項目ずつ追加して,MAI改訳版を計58項目で構成した. このMAI改訳版を使って大学初年次学生のメタ認知を2018年8月に測定した.この測定データとMAI仮訳版による2017年8月の測定データについて,設問表現が共通する41項目を取り上げて比較を行う等,基礎的な分析を行った.その結果,2018年の測定結果は2017年よりも高く,2018年の薬学部と教育学部の学生が引き上げていることがわかった. 表計算の自習支援システムについては,Office Open XMLのカスタムプロパティ機能を学習支援環境に活用する方法について検討した。学習者と問題ファイルの特定にハッシュ値を活用することで,学習者が問題に取り組んでいる最中であっても,学習記録を蓄積するデータベースを改変できる等,さまざまな利点があることがわかった。
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