研究課題/領域番号 |
16K01120
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
山本 朋弘 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (40772843)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タブレット端末 / 家庭学習 / 能動的学習 / ICT活用 / 教育評価 |
研究実績の概要 |
本研究では,タブレット端末活用による児童生徒の思考力・表現力を育成するために,学校での授業と家庭学習を連携し循環させた場合の学習効果を実証的に明らかにすることを目的とし.平成29年度は,以下の研究を展開した. (1)タブレット端末の持ち帰りによる,授業と家庭学習の連続性を促進する要因と阻害する要因に関する保護者向け意識調査を実施した.該当校の保護者253名の回答データを用いて探索的因子分析を実施した結果,平成28年度の教師向け調査の結果と同様に,促進要因として4因子を抽出し,阻害要因として3因子を抽出した.教員と保護者で比較した結果,教員が保護者より有意に高い結果となり,保護者にも共通理解してもらうための手立てが必要であると考えられる. (2)能動的な学習の循環モデルの試行では,算数・数学や理科,社会,体育において,授業と家庭学習での活用計画を作成し,循環モデルの検証授業を実施した.授業と家庭学習が循環する事例として22件の検証授業を実施し,児童生徒向け意識調査や学習シートの記述内容を比較分析した. 特に,家庭での教材コンテンツによる操作活動から授業で多様な考えを共有したり,授業の記録映像を家庭に持ち帰り,気づきや考えを授業で共有してまとめたりするなど,授業で他者と共有・交流するモデル案を明らかにした.また,家庭での実施状況を記録し,持ち帰りを行った場合とそうでない場合で学習時間や内容を分析し,タブレット端末持ち帰りによる効率的な学習を展開できたことを示した. (3)研究成果の公開としては,日本教育工学会第33回全国大会や日本教育情報学会第33回年会,全日本教育工学協議会全国大会において,本研究の成果を発表した.また,研究成果の一部を,鹿児島大学教育学部研究紀要の論文として投稿し掲載された.作成した資料を協力校等に提供し,今後は作成した資料等をWeb上でも公開する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)平成28年度の教員向け意識調査を参考に,保護者向け意識調査を平成29年3月から7月に実施し,小中学校7校253名の保護者から回答を得て,タブレット端末持ち帰りによる授業と家庭学習の連続性を促進・阻害する要因について,探索的因子分析を用いて分析した.その結果,促進要因4因子を抽出し,阻害要因3因子を抽出した.教員と保護者で比較した結果,教員が保護者より有意に高い結果となり,家庭での能動的な学習を支援する上で,クラウド等を用いた教員間の共有やeラーニング等での保護者への助言は有効であり,保護者に共通理解してもらうための手立てが必要であると考えられる. (2)タブレット端末持ち帰りによる循環モデル検証では,協力校の校内研修で検証計画を作成し,4つの学年で22単元において検証授業を実施し,児童生徒向け意識調査や学習シートの記述内容を比較分析した. 算数・数学では,家庭での教材コンテンツによる操作活動から,授業で多様な考えを共有し,理科や体育では実験等の記録映像を持ち帰り,気づきや考えを授業で共有してまとめるなど,授業で他者と共有・交流するモデル案を検討した.さらに,平成29年9月から平成30年2月に家庭での実施状況を記録し,持ち帰りを行った場合とそうでない場合で学習時間や内容を分析し,タブレット端末持ち帰りによる効率的な学習を展開できたことを示した. (3)研究成果の公開等については,日本教育工学会第33回全国大会や研究会,日本教育情報学会第33回年会において,促進要因や阻害要因に関する保護者向け意識調査やタブレット端末持ち帰りによる家庭学習の有効性に関する研究成果や課題を発表した.また,全日本教育工学協議会全国大会では,検証授業の実践者(協力校の教員)も成果を発表して,参加者との意見交換等から研究を深めた.さらに,研究成果の一部を鹿児島大学教育学部研究紀要に投稿し掲載された.
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今後の研究の推進方策 |
(1)教師・保護者の支援内容と役割の分析 保護者向けインタビュー調査を各学校4名程度の合計12名程度に実施し,発話内容を定量的・定性的に分析し,保護者の支援内容や役割について考察する.保護者の支援内容と役割を分類整理し,教師や保護者の支援人材としての役割と課題に関する説明資料を作成し,Webやリーフレットで広く公開する.タブレット端末持ち帰りによる授業と家庭学習の連続性を促進する要因や阻害する要因について,前年度の意識調査の結果に関する共分散構造分析を用いて分析し,因子等の関係性を明らかにし,保護者の支援内容や支援人材の役割や児童生徒の思考力・表現力への影響とも関連付けて検討する. (2)児童生徒の思考力・表現力向上に関する検証 算数・数学や理科,社会科,英語,体育の合計約20単元で,タブレット端末やeラーニングの活用によって,授業と家庭学習とが循環する能動的な学習の循環モデルを適用した具体的な活用事例を収集し,検証授業を通じて児童生徒の思考力・表現力向上を実証する.タブレット端末を持ち帰った場合とそうでない場合で検証授業を実施し,児童生徒向けの意識調査や学習シートへの記述を分析する.検証授業の様子を映像として記録し,授業での協働的な学びでの思考・表現の深まりにどのような効果があるかを分析する.また,体育科での運動や演技を撮影記録して持ち帰らせるなど,パフォーマンス評価等を取り入れ,思考力・表現力向上に関する教育効果を総合的に評価する.社会科や英語科での教材コンテンツを作成し,タブレット端末や無線通信等を活用して家庭に持ち帰らせ,能動的な学びの展開との関連を分析する.児童に家庭学習の状況を記録させるようにし,活用時間や活用内容等の活用状況等を分析する.授業者へのインタビュー調査やビデオによる授業を記録し,循環モデルを継続するために必要な教員の指導力を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)「その他」の項目は,Wifiルータ通信費として,84,000円を予定していたが,1年分の通信費を含んだLTEルータを購入したことで, 通信費を抑えることができ,費用を軽減できたため. (使用計画)30年度に予定している授業映像及び29年度に実施した授業映像の分析について,データ入力やデータ処理に係る時間が増加することが想定され,データ入力の人件費として使用する予定である.
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