研究課題/領域番号 |
16K01129
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
茅島 路子 玉川大学, 文学部, 教授 (80266238)
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研究分担者 |
平嶋 宗 広島大学, 工学研究科, 教授 (10238355)
林 大悟 玉川大学, 文学部, 准教授 (10432890)
小田部 進一 玉川大学, 文学部, 教授 (60407666)
宮崎 真由 玉川大学, 文学部, 准教授 (60534724)
林 雄介 広島大学, 工学研究科, 准教授 (70362019)
宇井 美代子 玉川大学, 文学部, 准教授 (80400654)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 成功的教育観に基づく授業省察 / 意図的教育観に基づく授業省察 / Kit-Build概念マップ / Scratch-Build概念マップ / 講義理解支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,学習者に作成させた概念マップから推定される学習者の授業理解の状態に基づいて教員が授業省察を行うための枠組みを構築することである. 概念マップには,学習者が概念(ノード)と関係(リンク)とを自由に作成し,これらを結合して概念マップを作成する形式のScratch-Build概念マップ(SB)と,教員が授業で学習者に伝達したかった内容を表した概念マップと,それをノードとリンクに解体した上で部品として学習者に提供し学習者がそれらを概念マップの形式に再構成した概念マップとを照合するKit-Build概念マップ(KB)とがある. 平成30年度は,次の成果を得た. 第一に,授業省察を「期待」と「実態」の差分に誘発され,実態を期待に近づけようとする行動を生じさせるメタ認知活動と定義し直して2種に分類し,そのうちの成功的教育観に基づく授業省察(学習者にはこのように理解してほしいという教員による学習者への「期待」と,実際の学習者の理解という「状態」)に着目した.次に,平成30年度に収集したKBのデータにより,学習者への期待を表す教員マップと学習者の理解の実態を表す学習者マップを比較した.その結果,期待と実態の不一致を引き起こす授業での働きかけ等について教員の授業省察が促された.また,期待と実態とで一致しない主な点は,概念マップの構造の中心となる概念(ハブノード)であることが示唆された. 第二に,情報選択,内部での関係づけ,外部との関係づけという観点から文章・講義理解を理論化し,支援方法を提案するMayer(1984)などのモデルを援用した結果, SBやKBの作成は講義理解を促す支援となることが示唆された.さらに,4年間の授業実践の中で学習者が作成したSBを分析した結果,学習者は内部での関係づけから外部との関係づけへと理解を変化させることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2016年度から2018年度まで計画通り授業実践を行い,Kit-build概念マップとScratch-Build概念マップのデータは取得した.Scratch-Build概念マップの分析は計画通りであるが,2018年度は本務校の業務により研究時間の確保が難しく,Kit-build概念マップと授業省察の分析が遅れている.
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今後の研究の推進方策 |
省察を「期待」と「実態」の差分に誘発されるメタ認知活動と定義し直し,「成功的教育観に基づく授業省察」を教員による学習者の授業理解についての期待と実態との差分に誘発される省察と明確に定義できたため,2016年度から2018年度までの授業実践のKit-build概念マップを基にした授業省察のインタビューを期待,実態,その差異,差異に基づいた授業省察という観点から分析する.分析に際しては,Kit-build概念マップの要点マップと学習者マップの一致率,再認テストの得点等とも関連づける.
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年度は本学が大学基準協会の審査を受ける年度だった.そのため,研究代表者は学部長,また大学院研究科長として,通常の学部長・研究科長業務の他に,報告書の作成,点検,視察関連業務等が加わり多忙を極めた.その結果,インタビュー・データおよび概念マップの分析に遅れが生じ,研究成果の公表ができませんでした. 補助事業を1年延期し,データ分析を進め,研究成果の発表および論文執筆のための打ち合わせの旅費に使用する予定である.
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