本研究は、学級経営の力量に関して課題をもつことが多い新任教員を対象として、自己の学級経営力をセルフ・アセスメントするためのアンケートとその結果を集計するレーダーチャート作成ソフトを組み合わせた可視化ツールを開発し、それを用いた教育工学的手法を持つ校内研修システムを開発することを目的とした。本研究では、学級マネジメント力アンケートを用いて新任教員が自己の学級マネジメント力をセルフ・アセスメントしてその結果をエクセルの集計ソフトによって可視化し、自己の学級マネジメント力の向上のためのR-PDCAサイクルを一年間で計画的・組織的に実施する校内研修システムを開発した。また、管理職や中堅教員と新任教員がコーチング技法に基づいて協働し、新任教員が自己の学級の事例を対象として学び、納得感の高い力量形成を可能とするR-PDCAサイクルに基づく校内研修システムを開発した。本研究は3年間という期間の中で、次のような項目に沿って研究を行った。1)学級マネジメント力の能力モデルを先行研究の分析により明らかにした。2)それに基づいて、学級担任が活用できる学級マネジメント力アンケートを作成した。3)MicrosoftのExcelでアンケート結果を可視化するレーダーチャート作成ソフトを作成した。4)新任教員を3年間で合計10名選定し、学級マネジメント可視化ツールを活用してもらい、教師インタビューを行い学級マネジメント力の変容過程の特徴と形成要因を明らかにした。5)管理職と主任教員からなるコーチング・ティームによる支援のあり方を明らかにした。6)学級力と学級マネジメント力の相互関連的な変容過程の特徴を明らかにした。7)新任教員の学級マネジメント力を高める校内研修システムの要件を明らかにした。本研究の成果は、田中博之編著『若手教員の学級マネジメント力が伸びる!』金子書房(2018年)として公表した。
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