研究課題/領域番号 |
16K01139
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研究機関 | 常葉大学 |
研究代表者 |
吉田 広毅 常葉大学, 教育学部, 教授 (40350897)
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研究分担者 |
中山 晃 愛媛大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (70364495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 反転学習 / 自己効力感 / ブレンディッド・ラーニング / ファシリテーション |
研究実績の概要 |
本研究は、(1)高次能力学習型反転学習に対する自己効力感の分析と反転学習自己効力感尺度の作成、(2)学習者の反転学習に対する自己効力感を基にしたファシリテーション・マニュアルの作成、(3)自己効力感の相違に対応したブレンディッド・ファシリテーションによる反転学習の促進の3つの目的で実施されている。 研究初年度の平成28年度は、当初の計画通り、研究目的(1)の「高次能力学習型反転学習に対する自己効力感の分析と反転学習自己効力感尺度の作成」を行った。具体的な工程としては、①反転学習に係る諸条件の整理:1ヶ月(平成28年4月)、②反転学習の基本方針の検討:1ヶ月(5月)、③反転学習のテーマ及び内容の検討:2ヶ月(6月、7月)、④反転学習教材の制作:4ヶ月(8月~11月)、⑤反転学習自己効力感の調査:1ヶ月(12月)、⑥調査結果の入力・集計・分析:2ヶ月(平成29年1月、2月)、⑦反転学習自己効力感仮尺度の作成:1ヶ月(3月)という手続きで研究を実施した。 自己効力感は、調査対象である大学生から自由記述で聞き取り、KJ法によって分類するボトムアップ的手法で明らかにし、反転学習自己効力感仮尺度を作成した。あわせて、次年度から実施する予定である高次能力学習型反転学習に備えて学習環境などの諸条件を整理するとともに、学習テーマ・内容を検討して教材を制作し、試行した。検討の結果、反転学習教材の制作にはTechSmith社製のスクリーンキャストソフトCamtasia Studio 8を用いることとし、高次能力学習型反転学習のテーマとして「教育の方法・技術」と「英語科教育法」を定めることとした。「教育の方法・技術」と「英語科教育法」をテーマとしたのは、どちらも背景的な理論や基礎知識を基に授業づくりや教材づくり、テストづくりなどを行うことが求められる題材であるためである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画通り、①高次能力学習型反転学習に対する自己効力感の収集・分析、②反転学習自己効力感仮尺度の作成、③反転学習教材の制作を遂行することができた。よって、平成29年度以降、当初の研究実施計画に沿って研究を進めることが可能と考えられる。本年度の研究成果は、平成29年度中に学会誌または学会大会にて発表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究二年目の平成29年度は、当初の計画通り、前述の研究目的(2)の「学習者の反転学習に対する自己効力感を基にしたファシリテーション・マニュアルの作成」を実施する予定である。まず、研究初年度に制作した教材を活用し、1セメスターに亘って反転学習を試行する。ついで、反転学習を体験した学習者に対するヒアリング調査を行う。その結果を分析することで、学習者の自己効力感に対応したファシリテーションを示すマニュアルを作成することを目指す。 具体的な活動としては、まず、前年度に制作した反転学習教材を活用し、大学生30名を対象に高次能力型反転学習を実施する。学習者には、実験の事前と事後に研究初年度に作成した反転学習自己効力感仮尺度を用いた調査に回答してもらう。学習の記録として、学習者の学修時間、反転学習教材の内容に沿った予習テスト、知識活用型グループ学習の課題に対する評価を集積する。あわせて、学習者からヒアリング調査を通じて高次能力型反転学習を体験した上で感じた隘路や課題、良さなどを調査し、その談話を分析する。そうすることで、どのような自己効力感をもつ学習者に対して、どのような支援方法を用いることで自己効力感が高まるのかを検討し、ファシリテーション・マニュアルを作成する。また、高次能力型反転学習の成果を検証するとともに、次年度の学習計画のために改善、工夫を要する事項を検討し協議する。あわせて、反転学習自己効力感仮尺度の妥当性や信頼性を検証し、尺度化することを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、平成28年度中に分担研究者と研究の打合せを行うことを目的として、複数回、静岡と松山を往復するための予算を計上していた。しかしながら、実際には研究代表者が別用で二度、松山を訪問する機会があり、その機会を利用して打合せを行った。また、国際学会に2名で参加することを予定していたが、連携協力者の都合がつかず、実際には1名で出張を行った。そのため、旅費関連の支出が当初予定より減少したことで次年度使用額が生じた。なお、打合せ自体は計画通り行われ、また研究に係る情報も収集された。よって、当初の計画通り、次年度以降の研究を遂行することが可能である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度は、予定しているための研究の打合せを計画通りに実施するとともに、前年度の研究成果を発表するため、国内外の学会、会議の場に積極的に出かけることで、予算を有効活用したい。特に、本年度は学習者へのファシリテーションの在り方を反転学習を通して考察し、具体的なファシリテーションの方策を策定するためのマニュアルの作成を予定しているため、分担研究者、連携協力者との連携をこれまで以上に密に取りながら研究を進める。
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