研究課題
これまでの取り組みの中で,まず,プログラミング読解過程中の視線運動を取得し,視線の推移の特徴が現れるモデル化手法を提案した.そして,プログラム構造に基づき,プログラミング読解過程中の視線運動を解析するための実験プロトコルを設計した.代入演算と算術演算のみで構成される3行のプログラムで生成可能な4パターンのデータ依存関係をもつソースコードを実験課題とし,被験者データを取得し分析を行った.具体的には,視線の推移を評価するため,確率で表した単純マルコフ過程モデルを構築した.そして,単純マルコフ過程モデルのノード間の推移確率とデータ依存関係の有無を比較した.その結果,プログラム読解固有の振る舞いとして,各パターンのデータ依存関係の影響を確認することができた.以上の成果を踏まえ,ソースコードを正確かつ効率的に読めるようになるための学習はプログラミング力を向上させるために重要であると位置付け,プログラムソースの内的構造の把握と適切な読解力の学習を狙いとしたソースコード読解学習システムの開発を進めた.読解学習の目的は,視線分析の結果も踏まえると「要領良くプログラムを読めるようになること」と設定できる.すなわち,認知負荷理論の知見から説明すると,力を入れるべきではない非本質的な作業に対しては極力手を抜くことが合理的であり,その動作の合理性が視線に出現した結果と考えられる.読解における「要領の良さ」として,プログラムの構造を把握する力とされているが,本研究では,プログラムの部分を適切にチャンキングする力も該当すると考えた.そこで本研究では,チャンク方略そのものがプログラミング読解に役立つことを実験的に明らかにし,その結果を踏まえ,チャンク方略に基づいたプログラミング学習の効果を明らかにした.以上により,チャンク方略に基づいたソースコード読解支援システムの開発に繋がる知見を獲得した.
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IIAI International Journal Series, International Institute of Applied Informatics
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