研究課題/領域番号 |
16K01157
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川本 思心 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (90593046)
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研究分担者 |
鈴木 努 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (00595291)
種村 剛 北海道大学, 高等教育推進機構, 特任助教 (20759740)
杉山 滋郎 北海道大学, 理学研究院, 名誉教授 (30179171)
田中 幹人 早稲田大学, 政治経済学術院, 准教授 (70453975)
石井 哲也 北海道大学, 安全衛生本部, 教授 (40722145)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | デュアルユース研究 / 軍民両用性 / 用途両義性 |
研究実績の概要 |
本年度は、安全保障技術研究推進制度(以下推進制度)を中心とした、日本や海外のデュアルユース研究について、学術会議報告書、経団連声明、防衛省資料、国会議事録、主要新聞記事等の資料の調査、推進制度の説明会や日本学術会議の安全保障に関するフォーラムへの参加、関連分野の専門家・関係者等へのヒアリングを行い、「デュアルユース」の何が問題とされ、どのような議論がなされているか、現状を整理した。 次に科学史の観点から、日本の軍事研究・デュアルユース研究をまとめた『軍事研究の戦後史』(杉山滋郎)を出版した。さらに、1960年代の南極観測事業再開に対する自衛隊の協力問題を巡ってなされた学術会議での議論をケーススタディとして、日本学術会議図書室において資料調査を行った。 これらの調査から、現代日本において「デュアルユース」という用語には、1990年代まで用いられてきた旧来の意味での「軍民両用性」と、2000年代から用いられ始めた「用途両義性」の二つの概念が混在していること、そしてそれらは明確にアクターによって使い分けられていることが明らかになった。 また、軍民両用研究や推進制度に関する論点は、戦後日本でなされた軍事研究批判での論点とほぼ重なっていることが示唆された。例えば軍事研究を批判する際に、研究されている技術が潜在的にもつインパクトや汎用性に関わらず、マンハッタン計画やその後の研究者の対応をモデルとして用いられることが多くみられた。一方で軍民両用研究を容認する典型として、科学技術はそもそもデュアルユースである、という素朴な反応があった。これらのいずれも、現在の科学技術、安全保障概念、そして日本の現状に対して十分に対応できるものとは言い難いだろう。推進制度の発足以来、議論されているのはほぼ「軍民両用性」であり、ゲノム編集技術等がもたらす「用途両義性」への視点もかき消されている現状がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在の資料の調査、科学史的調査については概ね順調に進展しており、上記の結果を得る事ができた。一方、質問紙調査については、当初計画では第4四半期に実施するとしていたが、本研究は追加採択されたこともあり、計画・実施する余裕がなくこれを次年度に延期した。質問紙調査や膨大なデータを扱うメディア分析は、まず十分に質問項目や分析観点を検討することが必要だが、本研究は現在日本の問題をテーマとしており、状況が刻一刻と変わるため、やや現状のフォローに注力してしまったきらいがある。 しかし、研究メンバーや他の研究者との議論によって概ね調査の観点を定めることができた。また、本研究の最終的な方向としては、軍事研究だけではなく、より広い研究倫理・イノベーションの文脈でのデュアルユース研究のガバナンス、特に教育プログラムへの展開を視野に入れることも検討することができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初平成28年度に実施する予定だった、質問紙調査を平成29年度に行う。調査対象はこれまで明確に定めていなかったが、これまでの研究メンバーの議論を経て、北海道大学の研究者を主対象に実施することを検討している。また、推進制度の公募期間である5月末まで、そして発表時期である8月にあわせて、何らかの議論の場を設け、質問紙調査と合わせてアウトプットすることを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
質問紙調査については、当初計画では第4四半期に実施するとしていたが、本研究は追加採択されたこともあり、計画・実施する余裕がなくこれを延期した。質問紙調査や膨大なデータを扱うメディア分析は、まず十分に質問項目や分析観点を検討することが必要であるが、本研究が現代日本の問題を扱っており、刻一刻と状況が変わり論点整理にやや難しさがあった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額のほとんどは平成28年度実施予定だった質問紙調査費であり、その実施に使用することを計画している。
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