研究課題/領域番号 |
16K01158
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
橋本 毅彦 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90237941)
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研究分担者 |
田中 祐理子 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (30346051)
吉本 秀之 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 教授 (90202407)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 科学史 / 技術史 / 写真史 / 顕微鏡 |
研究実績の概要 |
8月、9月、3月の3回会合をもち、それぞれの研究内容に関して討議した。9月の会合は、化学史学会主催のワークショップという形で開催し、10名ほどの出席者がいる中で、プロジェクトの参加者である田中氏、吉本氏、橋本、そしてプロジェクトに協力してくれている化学史家の河野俊哉氏が研究成果を報告し、質疑応答した。8月の会合はこの9月の会合の準備のために開催し、3月の会合は9月の会合の成果を発展させ、論文として成果をまとめていくための準備を進めた。9月の会合では、田中氏と橋本は2016年度に進めていた研究を今年度も引き続き深めていく作業を進めた。田中氏はレーウェンフックの顕微鏡による観察研究において、何を観察し、それをどのように理解し、図で表現しつつ説明したか、分析を深めてもらった。田中氏は橋本はもっぱらRatcliffとSchickoreの研究内容と論点を紹介し、また依拠しつつ、他の関連する一次、二次資料を紹介することで、18世紀から19世紀にかけての顕微鏡を利用した生命現象の観察研究の進展と、その顕微鏡自体の発展との関連性に関して報告した。顕微鏡観察の性能向上、観察された視覚像・図像の信頼性、ミクロの生命・自然界の細密な構造に関する理論の発展との関係について論じた。吉本氏は写真技術の起源についての研究を深め、紫外線や光化学作用の発見から写真の発明に至るまでの過程を詳しく分析して紹介した。写真の発明にあたっては感光作用と定着作用の発見とその技術的応用が鍵になるが、関わった科学者・技術者の認識や実際の貢献に関して明らかにした。各参加者はこれらの研究成果をさらに発展させ、化学史学会の機関誌に投稿する論文を準備しているところである。3月の研究会では、それらの準備を進める論文の内容に関して、予備的な報告を行い、検討とディスカッションを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた東京と京都での会合を2回と1回もつことができ、代表者と2人の分担者が発表報告を行った。昨年度から研究プロジェクトに協力してくれている河野俊哉氏も報告してくれた。また2017年度は、プロジェクトの参加者内部での会合だけでなく、前述のように化学史学会のワークショップとして関心をもつ科学史家に研究成果を報告し、ディスカッションを通じて貴重な意見を聞くことができたことも成果であった。計画されていた事項の一部はまだ遂行されていないが、今後それらの事項もなるべく含めて遂行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度には、5月末に日本科学史学会でのシンポジウムを企画している。発表者は、2017年度の化学史学会のワークショップと同様、プロジェクトの参加者である田中氏、吉本氏、橋本を含む4人である。発表内容は前回の発表をさらに発展させたものになる予定である。この5月の学会シンポとともに、例年通り9月、3月に研究会の開催を予定している。 田中氏は、顕微鏡観察の歴史について、技術的および認識論的な諸条件の変化との関連に留意しつつ、17世紀のレーウェンフックの観察と18世紀におけるその受容、また19世紀の顕微鏡観察の方法論的・技術的発展とパストゥールの微生物学、という歴史的な2点を比較対照する。その上で、ヘンチェルの科学技術史と図像に関する研究を参照しつつ、顕微鏡が可能にする視野と生物学的知識の展開との関係を分析する論文をまとめてもらう予定である。橋本は、田中氏の研究と関連させつつ、18世紀の顕微鏡観察研究の継承と発展を視覚図像の役割に注目しつつ分析する。また光学機器として顕微鏡と特徴を共有する望遠鏡の利用に関する18世紀から19世紀にかけて進展を追いかける。これらの課題をめぐり論文またエッセイレビューを書く予定である。 吉本氏は、視覚装置、光学装置のうち、存在が隠れてしまいがちな覗く装置の系譜を発掘し、科学史研究として位置づける作業を行う。特に、カメラ・オブスクラと混同されがちな覗き眼鏡(ゾグラスコープ、覗き箱、光学箱等々の名前で呼ばれる)と遠近法的眺めを19世紀において広めたステレオスコープに注目し、研究会、ワークショップ、シンポジウムでの成果に基づき論文を執筆する予定である。
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