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2017 年度 実施状況報告書

トランスサイエンスからポストノーマルサイエンスへ

研究課題

研究課題/領域番号 16K01163
研究機関神戸大学

研究代表者

塚原 東吾  神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)

研究分担者 標葉 隆馬  成城大学, 文芸学部, 専任講師 (50611274)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2021-03-31
キーワードRRI / STS / 科学論 / 科学哲学 / 技術論 / 技術哲学 / 技術倫理 / 研究倫理
研究実績の概要

本年度も継続的に研究行い、塚原・標葉ともに最近のSTSの理論的モデル化の先端を検討してきたが、今年度は特に塚原がデルフト工科大学・トゥウェンテ工業大学でのインタビューをおこなうなどの調査活動を展開した。標葉は、科学技術社会論研究などをはじめとする内外の学会誌に精力的な投稿を行い、活発な執筆活動を続けている。
塚原の行った調査では、オランダの技術哲学、およびRRI(責任ある研究とイノベーション)プロジェクトについて、デルフトでは、学科長を務めるIbo van de Poel 教授およびSabine Roeser 教授 およびBehnam Taebi 准教授に話を聞き、またトゥウェンテ工業大学では、博士論文を出版した気鋭であるJan Peter Bergen 博士から話を聞いた。オランダではEUの科学政策ロビーに強く実質的にはフレームワーク7から、2020の政策ゴール(ホライゾン)のためのRRIのドラフトを行っていたJeroen van den Hoven (デルフト)や、具体的なRRIの推進ツールを作成しているPim Klaasen (アムステルダム自由大学)、ロボット・AIに強い現象学系の倫理学のPeter-Paul Verbeek (トゥウェンテ)らがいるが、今回は、中堅・若手を中心に、現在の研究や、研究組織の方向性、そしてRRIについて(およびEUの科学政策の動向)への貢献の可能性や批判的論点などを聴取してきた。今回の成果のひとつとして重要なポイントになるのは、これまでイギリス系の論客(Jack Stilgoeらをはじめとする政策ロビー)が、EUの科学政策を引っ張っていて、大阪大学の平川らのグループがそこを検討しているが、オランダでの感触としては、すでに「ブレクジット」的な状況を踏まえ、イギリス抜きでやるというのがデファクトになっていた様相を呈していたことである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回のオランダ出張で明らかになったことは、RRIやEUの科学技術イノベーション政策、そして、最近の技術哲学・研究倫理の方向性について、ESDやSDGへの反省(トップダウン型であったことや、官僚機構の肥大化による効果の希薄化)、などもあり、(その類似性と相違については日本でも吉澤剛(2017)などが論じている)またイノベーション政策を進めるうえでのビジネス界や経済界、そして政策推進側と研究者・アカデミアとの齟齬などが大分表面化してきていることである。オランダの技術哲学 ・研究倫理は、かなり盛んで、一時ヨーロッパのSTSの中心だった状況さえも、いまや凌駕しようとしている。(もちろん、たとえば今回インタビューに答えてくれたIbo van de Peol 教授は、Ph.D.をオランダSTSの領袖ともいえるArie Rip氏の下でとっているので、ある種の連続性がある。)なお関連の事業として、東北大学の直江清隆先生(技術哲学)がオランダのNWO(学振に相当する機関)とJSPSとの共同プロジェクトとしてオランダの技術哲学についてのWSを企画している。
これらの現況を踏まえると、これまでの塚原および標葉による情報収集・調査やモデルの検討は当を得たものであり、時宜にかなった研究の方向性にあると判断できるため、これは順調に進展していると考えられ、今後も現在の方向性を進めることが確認された。

今後の研究の推進方策

RRIやEUの科学技術イノベーション政策、そして、最近の技術哲学・研究倫理の方向性について、ESDやSDGへの反省(トップダウン型であったことや、官僚機構の肥大化による効果の希薄化)、などをどう考えるべきか、(その類似性と相違については日本でも吉澤剛(2017)などが論じている)またイノベーション政策を進めるうえでのビジネス界や経済界、そして政策推進側と研究者・アカデミアとの齟齬などが大分表面化してきていることへの対応を考えなければいけない。
オランダの技術哲学 ・研究倫理は、かなり盛んであり、関連の事業として、東北大学の直江清隆先生(技術哲学)がオランダのNWO(学振に相当する機関)とJSPSとの共同プロジェクトとしてオランダの技術哲学についてのWSを企画していることに対しての取り組みも考えるべきこととして浮上してきている。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] A Comparative Analysis of Attitudes on Communication Toward Stem Cell Research and Regenerative Medicine Between the Public and the Scientific Community2018

    • 著者名/発表者名
      Shineha et. al.
    • 雑誌名

      Stem Cell Translational Medicine

      巻: 7 ページ: 251-257

    • DOI

      http://dx.doi.org/ 10.1002/sctm.17-0184

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Science communication in regenerative medicine: Implications for the role of academic society and science policy2018

    • 著者名/発表者名
      Shineha et.al.
    • 雑誌名

      Regenerative Therapy

      巻: 7 ページ: 89-97

    • DOI

      http://www.elsevier.com/locate/reth https://doi.org/10.1016/j.reth.2017.11.001

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Commentary: New Currents in Science: The Challenge of Quality, examining the discrepancies and incongruities between Japanese techno-scientific policy and the citizens’ science movement in post-3/11 Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Togo Tsukahara
    • 雑誌名

      Futures

      巻: 91 ページ: 84-89

    • DOI

      https://doi.org/10.1016/j.futures.2017.04.008

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 総合工学は細分化された工学の出口管理か? : パラダイムと二つの文化、価値選択2017

    • 著者名/発表者名
      塚原東吾
    • 雑誌名

      学術の動向

      巻: 22 ページ: 13-17

  • [雑誌論文] 気象談話室 科学史のなかでの気象学史 : 「歴史の科学化」と社会史視点という両輪2017

    • 著者名/発表者名
      塚原東吾
    • 雑誌名

      天気

      巻: 64(9) ページ: 625-630

  • [雑誌論文] バイオ・キャピタルの系譜学(ver.2) : 再生医療のポリティックスと軍事研究の新局面2017

    • 著者名/発表者名
      塚原東吾
    • 雑誌名

      現代思想

      巻: 45(9) ページ: 118-133

  • [雑誌論文] デュアル・ユースのトリック2017

    • 著者名/発表者名
      塚原東吾
    • 雑誌名

      大学出版

      巻: 110 ページ: 20-25

  • [雑誌論文] 学会組織はRRIにどう関わりうるのか2017

    • 著者名/発表者名
      標葉隆馬
    • 雑誌名

      科学技術社会論研究

      巻: 14 ページ: 158-174

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 人文・社会科学を巡る研究評価の現在と課題2017

    • 著者名/発表者名
      標葉隆馬
    • 雑誌名

      年報科学・技術・社会

      巻: 26 ページ: 1-39

    • 査読あり
  • [学会発表] ACRE Japan2017

    • 著者名/発表者名
      Hisayuki Kubota,Jun Matsumoto, Tomoshige Inoue, Masumi Zaiki, Takehiko Mikami, JunpeiHirano, Haruhiko Yamamoto, Togo Tsukahara, andHirotaka Kamahori
    • 学会等名
      第10回ACRE会議
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Overview of ACRE Japan Activities2017

    • 著者名/発表者名
      Jun Matsumoto, Tomoshige Inoue, Hisayuki Kubota, Masumi Zaiki, Takehiko Mikami, JunpeiHirano, Haruhiko Yamamoto, Shigeru Kobayashi, Togo Tsukahara, Hirotaka Kamahori
    • 学会等名
      International Workshop at Academia Sinica, Taipei
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 日本における19世紀気象観測記録の収集とデジタル化2017

    • 著者名/発表者名
      財城真寿美、塚原東吾ほか
    • 学会等名
      日本地理学会発表要旨集 日本地理学会
  • [学会発表] 東アジア・東南アジアにおける気象データのデータレスキューについて2017

    • 著者名/発表者名
      久保田尚之、塚原東吾ほか
    • 学会等名
      日本地理学会発表要旨集 日本地理学会
  • [図書] 軍事研究の歴史における戦前・戦後の技術の連続性を考える2017

    • 著者名/発表者名
      塚原東吾・愼蒼健
    • 総ページ数
      116
    • 出版者
      神戸STS叢書

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公開日: 2018-12-17  

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