研究課題/領域番号 |
16K01163
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
塚原 東吾 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80266353)
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研究分担者 |
標葉 隆馬 成城大学, 文芸学部, 准教授 (50611274)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | STS / 生ー資本論 / 科学史 / 科学哲学 / 責任ある研究 / 市民科学 / 大学評価 / SDG |
研究実績の概要 |
本年度は代表者、分担者ともに、いくつかの成果を出すに至った。現在刊行された関連の業績は以下のものである。 塚原 東吾 「過去の災害をどう探るか? : 古気候記録の収集・分析と市民科学の試み」 『立命館生存学研究』 3 17 - 31 2019;「オリンピックとカジノ万博は現代のバベルの塔か? : 科学技術とプロテスタンティズムの倫理」『福音と世界』 74(8) 30 - 35 2019;塚原ほか『アジアの気候再現 : 航海日誌・モンスーン・台風をめぐる人文学と気象学のトランスサイエンス』 神戸STS研究会;Legacies and Networking: Japanese STS in Transformation, in East Asian Science, Technology and Society 13(1) 1 - 7 2019;「科学史・科学哲学、STS(科学技術社会論)の 視点から見た『ソサエティ5.0』」「みんなのSDGs」シンポジウム 聖心女子大学 2019年7月5日 標葉隆馬 「科学技術社会論における生‐資本論」『科学技術社会論研究』 17 37 - 54 2019;[大学のパフォーマンスを測るということ] 『科学』 918 - 923 2019 ほかにも本研究課題に関連して、以下の国際会議、国内のシンポジウムなどでの報告をおこなっている。Needham's Japan, Japan's Needham: Legacy of "Science and Civilization in China". 『中国科学技術史(中国的科学与文明)』和日本科学史 Togo Tsukahara 塚原東吾 北京フォーラムBeijing Forum 2019 2019年11月3日; 科学史・科学哲学、STS(科学技術社会論)の 視点から見た『ソサエティ5.0』 神戸大・塚原東吾 「みんなのSDGs」シンポジウム 2019年7月5日
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
塚原、標葉ともに研究を順調に進め、十分な研究成果、業績、学会発表などをこなしている。また共同での検討や討議もおりに触れて行っており、ここまでの研究は、おおむね順調な展開となっていることは衆目の認めるところであろう。 だが現在の懸念材料としては、新型コロナウイルスの蔓延という事象があげられ、本年の最終段階でそれが発覚指定るが、これについては逆に、塚原・標葉にとっての研究の対象でもあり、すでに塚原はこれについて「人新世」の観点からの分析をすすめており、標葉もポストコロナ時代における研究の社会的責任(RRI)についての検討を進めることが期待されている。 そのように、研究の進捗状況は、おおむね順調に進展していると判断することが妥当であると考えられるため、このような区分に入れる。
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今後の研究の推進方策 |
現在の研究を各々すすめながら、最終年度に向けての研究の集大成に取り組む。 なかでも塚原はコロナ禍のなかでこれまでのSTSの概念枠組みの影響と対応を検証し、いわゆる「ニュー・ノーマル」という概念が主張されるにいたるプロセスのなかで、「ポスト・ノーマル・サイエンス」概念(PNS)や、トランス・サイエンスなどのこれまでの既存の枠組みとの関係を再度とらえ直す。 そこでは2020年には国会審議のなかでさえ取沙汰されるようになった「正常性(ノーマルシー)バイアス」(立件民主党・枝野党首の質問)という概念もとりあげていることにchく黙してゆく。これはそもそも心理学用語であり、アメリカの戦時体制とそこから復帰を論じた文脈で使われたキャンペーン言語であったが、その後、心理学の世界のなかできわめて限定的でマイクロな場でしか取り上げてこられなかった。だがこの概念が復活したのは、ポスト311のなかでのことである。ある種の危機とそこからの「復興」の掛け声の中で、この概念は再度脚光を浴び、2012年ころに、低線量被ばくの文脈で取り上げられ始めたり、また2016年前後からはオリンピック開催に関する議論のなかで、首相のいわゆる「アンダー・コントロール」概念を批判したり、放射「脳」という揶揄を含んだ議論に対する対抗的な概念として取り上げられてきた。このことをSTSの新たなトレンドとして、本課題の今後の推進の方向のひとつとして取り上げたい。 また標葉はいわゆるRRIについての研究を進めてきているが、さらにその検討を深め、大阪大の平川らがこの方面の検討を進めてきたことをさらに一歩進め、具体的で実践的な研究の現場に持ち込み、この概念を社会的に適応させる可能性を追求してゆく方向で推進を検討している。
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