研究課題
本研究ではトランスサイエンスからポストノーマルサイエンスへということで、近年のSTSについての理論的動向を検証し、これまでの理論的な進展の中で現在の最先端の状況についての検討を行った。トランスサイエンス概念は、日本では小林傳司らが日本でSTS学会を立ち上げた当時から、日本のSTSでの中心的な概念として機能してきており、その意味付けは重要である。またポストノーマルサイエンスは、イギリスのジェレミー・ラベッツを中心とする、フューチャーズ誌に集うグループが提唱したもので、現在ではEUの環境政策・科学技術政策ロビーでは中心的な概念となっており、近年ではイノベーション・研究政策でも、有効な概念として注目されている。日本では、STSの新世代である神里逹博が検討を初めており、注目されている。そのような中で、この研究プロジェクトで、塚原はオランダを中心とするヨーロッパ大陸での議論の展開を、PNS概念を中心に検討し、科学批判や科学と社会の関係についての市民的関与に関する状況に、ヨーロッパでのEC(ヨーロッパ委員会)主催の会議や東アジアSTSジャーナルへの寄稿、また東アジア科学技術医学史学会などに参加・招待講演、基調報告などすることで、動向を取材・検証し、国際的に広く議論を開いた。また標葉はEUの科学政策に近いところで重要な概念となっているRRI概念(責任ある研究とイノベーション)について特に注意を向け、日本へのこの概念の紹介と適応についての可能性について検討を試みて、この分野における画期的な著作を刊行し得た。これらのことは、ひとえに日本国内へのインパクトのみならず、国際的にも日本のSTSの位置付けを確認したという意味で、大きな成果であり、日本においてはこの分野を切り拓く仕事をしたものと高く評価ができるものだと自負している。
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