研究課題
本科研3年間の研究期間全体を振り返ると,一部に資料へのアクセスが確保できず,本研究の重要な部分で期待した成果はえられなかったとはいえ,(1)希少資料を駆使した研究によって,ソ連から東ドイツをはじめとする東欧“同盟”諸国への原子力“平和利用”普及の制度的側面について,背景としての1960年代のソ連におけるエネルギー危機,東ドイツなどにおける燃料資源の欠乏・貧困ゆえの原子力発電への強い期待,条件としての黒鉛炉体系・軽水炉体系両用の重層的な核燃料サイクルの構築といった史実を探り出し,(2)ソ連・東欧における初期放射線影響研究について,アメリカ流の“ビッグ・サイエンス”による圧倒的なデータの量を前に圧倒されたソ連の科学者がやがて英米流の放射線影響評価のフォロアーとなった過程を明らかにすることができ,当該分野における研究の発展に大きく貢献できたと考える.この研究のため,期間中5回にわたり,モスクワに立地するロシア科学アカデミー文書館やロシア国立図書館などで資料調査を実施した.また,2016年9月にはベルリンで当地の歴史家に対する聞き取り調査を実施した.研究成果の発表では,なによりも,Routledge社のもとめに応じて,本科研の成果を含む,研究代表者による多年の研究成果を英語で出版できたことを特筆したい.また,国際的な発表機会を重視し,国際誌での論文発表2報(他に和文1報)のほか,2017年7月にはThe 25th International Congress of the History of Science and Technology (リオ=デ=ジャネイロ)で,2018年11月には,総研大や他の科研班などの共催により開催された国際ワークショップ“Radiation Diplomacy”(京都)で研究発表をおこなった(その他に学会発表など5件).
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件)
広島大学平和センター『広島平和科学』
巻: 40 ページ: 1-15
The History of Science Society of Japan, _Historia Scientiarum_
巻: 28-2 ページ: 134-151
http://home.hiroshima-u.ac.jp/ichikawa/