研究課題/領域番号 |
16K01167
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
日野川 靜枝 拓殖大学, 付置研究所, 研究員 (90134832)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 1930年代カリフォルニア大学 / 軍・産・学複合体制の起源 / 科学・技術の動員体制 / 1930年代のサイクロトロン開発 / 政府と大学の研究契約 / アルフレッド・L・ルーミス / ロックフェラー財団 / アーネスト・O・ローレンス |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アメリカにおける軍・産・学複合体制形成の起源を、大学と政府機関とが結んだ研究契約を分析することによって、実証的に解明することです。その具体的対象には、カリフォルニア大学を選びました。なぜなら、周知のようにカリフォルニア大学は第2次世界大戦に深く関与し、戦後も核兵器開発を担当するロスアラモス研究所を継続して運営するなど、アメリカの軍・産・学複合体制における重要な構成要素と位置付けられているからです。 これまでの研究によって、1929年の世界大恐慌後の1930年代、カリフォルニア大学がサイクロトロン開発を通じてどのような人的・技術的・財源的繋がりを形成して、ついには第2次世界大戦に向かう政府の科学・技術動員体制すなわち研究契約に組み込まれていくことになったのかを、明らかにできました。その成果は英文論文として、所属する拓殖大学人文科学研究所の紀要にすでに発表しています。Repository,Permalink.http://id.nii.ac.jp/1579/00000148/
本年度は、これまでに収集しました資料に基づき日本アメリカ史学会において、「カリフォルニア大学における科学の軍事化の道具立て―外部資金・特許政策・学則No.4の変更―」を発表いたしました。また研究成果の広報として、新聞投稿(「『科学の軍事化』を警戒する」、東京新聞夕刊、2019年12月12日付)やインターネット上の媒体にも投稿(「『科学の軍事化』を考える」、軍学共同反対連絡会、News Letter,No.37,2019.10.15.)しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
家族の介護が連続しております。
本年度中には、長期間の出張による資料調査・収集を実施することが困難となり、予定していた研究遂行が遅れています。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、バークレー市のカリフォルニア大学バンクロフト図書館において、1930年代の理事会議事録などを調査したいと考えています。 これまでは研究の現場に注目して、大恐慌後1930年代のカリフォルニア大学における研究活動が研究契約を通じて、いかにして軍事化されていったかを明らかにしてきました。その際に、1つの疑問が浮かびます。大学執行部、特に理事会において、この研究契約問題がどのように検討されてきたのかということです。 なぜなら、まさに一州立大学であったカリフォルニア大学が戦後有数の研究大学となる契機、それこそがこの戦時中に拡大する研究契約の存在にあると考えるからです。しかし、同時にそれは学問の自由・大学の自治に背く、アメリカ社会における軍産学複合体制の形成でもあったと考えています。この仮説をぜひ検証したいと願っています。
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次年度使用額が生じた理由 |
家族の介護のために、予定していた研究遂行が遅れたためです。そこで、延長申請を提出し、2020年3月18日にご承認をいただきました。
次年度はバークレー市のカリフォルニア大学バンクロフト図書館で、1930年代の理事会資料を調査したいと願っております。
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