研究実績の概要 |
本研究は、当初4年間という計画で着手しています。しかしその後は家族介護のために1年間の延長が必要となり、コロナ禍による2年間の自動延長も加わって、合計7年という長期間の研究となりました。この7年間が研究遂行に有効であったのかを検証するならば、その答えは否です。非常に残念です。しかし家族の介護やコロナ禍の事態発生はまったく予測不可能なことですから、不運であったという諦めの境地を伴って、この現実を直視し受け入れざるを得ません。特に研究の進展を大きく阻んだ要因は、コロナ禍によって一時閉館となってしまったカリフォルニア大学のバンクロフト図書館における資料収集作業の中断です。コロナ禍以前に理事会資料を閲覧室に呼び出しながらも、帰国の迫った滞在期間の都合によって、まったく資料入手ができなかったのです。その後はコロナ禍となって、同図書館を再訪することは不可能でした。
しかしながら、不十分ではあっても所期の目的の一端は果たせたのではないかと判断できる論考を、2018年度には発表することができました。Shizue Hinokawa, “How Science Became Militarized: The Case of the University of California at Berkeley,” The Journal of Humanities and Sciences No.40 (2018):1-24.(日野川静枝「科学の軍事化はどのようにして生じたか―カリフォルニア大学の場合を中心に―」『人文・自然・人間科学研究』第40号(2018年10月)、1-24頁。)なお、コロナ禍による延長の期間中は、新聞、雑誌などに自分の見解を投稿しました。それは、1930年代のアメリカ社会を対象とした歴史研究から得られた知見を、現状の日本社会の市民に向けてぜひに伝えたいメッセージです。
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